ダイバーシティ実現のカギは成果評価の客観性向上--ダイバーシティ推進で大きく変わる日本型人事制度 第3回(全3回)
人事部門は新入社員の採用や配属決定権などがある。また、管理職への昇格の最終決定は社長・副社長・人事担当役員であることが多く、かなり上の組織階層が最終決定者となっている。公式の人事決定権をこうした部門が持っているために、ライン管理者は思い切った評価が行いにくくなる。
もう1つが評価過程での調整の多さだ。日本では2次考課者、人事部門、全社的な人事委員会などによる評価結果の調整が一般的に行われる。このため、1次考課者の評定が覆ることも少なくない。しかも、その調整理由は1次考課者に告げられることはあまりない。結果として、1次考課者は説明責任から逃れることができた。だが、これではライン管理者の評価能力は向上しない。
パフォーマンス評価の質を上げようとするなら、どうしても評価権の分権化が必要となる。そもそも、パフォーマンス評価はパフォーマンスの実態を知る人が評価することが重要だ。評価を正しく行おうとするなら人事考課結果への調整をできるだけ排除し、1次考課者に決定権を委ねることが必須要件なのである。
だが、実際には人事権の分権化は難しい。すでに権限を持っている経営層など組織の上層部と人事部門の両方の抵抗が強いと予想されるためだ。彼らが人事権という大きな権限を簡単に手放すとは考えにくい。そうするとライン管理者の評価能力はいつまでたっても向上しないということになる。
以上のように、
(2)集権化した人事権を変化させることの難しさ
慣れ親しんだ日本型人事管理から脱却し、ダイバーシティを推進できる人事管理に変化することは決して簡単なことではない。これが日本でダイバーシティが進まない大きな理由として考えられる。ダイバーシティ経営を本当に実現しようとするなら、経営陣、人事部など会社全体が変わっていくことが必要となるのだ。
日本能率協会で人事専門誌『人材教育』の編集長等を歴任。英リーズ大学で人材マネジメント(HRM)の修士号、英バース大学で博士号(Ph.D)を取得。専門は人材マネジメント。2005年より現職。
社会人対象のMBA教育を行う同学科で、人材マネジメント、組織行動、リーダーシップなどの科目を担当。主な著書に『日本型賃金制度の行方』『HRMマスターコース』(いずれも単著)『戦略とは何か?』(翻訳)などがある。
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