しかし、1社で勤め上げるというキャリアはもはや終焉を迎えている。外を見渡せば、スタートアップやベンチャーのように20代で、マネジャーどころか役員層がいる会社も珍しくない。そのため30歳を過ぎた頃にもなると、実力主義の会社と旧態依然とした会社では、同世代でもキャリアの差が大きく広がり、焦りはじめる。
終身雇用などはじめから信じていないし、転職することへの抵抗感も薄まっていることもあり、「今の環境は、確かに悪くないものではある。しかし、このままでいいのか? 将来、今の上司のような姿になっていくのか……?」と考えるうちに、解決策を外に求めていくのだ。
しかし、社内でのキャリア構築について面談などの場で管理職に相談しても、「自分の成功体験を押し付けられる」ことが多い。また、上司は部下から退職の相談を受けると、深く考えずに引き留める。その時点で、自分の価値観や体験を無意識的に押し付けているといってよい。
40歳で一人前という考え方は、下の世代からすると「どう考えても遅すぎる」というか、本音で言えば「あなたのようになりたくはなく、尊敬できない」のだ。昔は上司の背中を見て育ったかもしれないが、今は上司が部下のロールモデルにはならないことを意識すべきだろう。時代が違うのだから、部下を自分と同じやり方で育てようとか、無意識的に自身の生き方を追従してほしいという考えはもう通用しないと認識したほうがいい。
上司が一本道のキャリアを歩んでいる
上司がお手本にならないのは、ほかにも理由がある。「自社・自部門のことしか知らない」からだ。つまり社外に出たときに価値が出せるのか?に疑問があるのだ。「新卒入社して以来、○○部門一筋」のような、一本道のキャリアを歩んできた場合はとくに注意したほうがいい。
筆者徳谷は数多くのキャリア支援をする中で、「クリエイティブ・ジャンプ」(非連続な修羅場経験)という概念を提唱した。非連続にジャンプするような経験があまりにも足りないため、変化対応力が弱く、社外で必要とされない可能性が高い。
例えば、ある業界や業務について誰よりも詳しく、プレイヤーとしても高い実績を挙げてきたかもしれないが、環境が変わった途端に求められる能力が変わると、何もできない人になってしまう。
また、特定の環境でしか働いたことがないため、新たなスキルや知識を学ぶ機会をつかもうとせず、視野が狭くなりがちなことも、部下から「あの人みたいになりたくない」と距離を置かれてしまう要因。このような信頼関係の崩壊を防ぐには、本来は、上司こそ、率先して“外に出る”必要があるだろう。
外に出ると言っても必ずしも、転職を推奨している訳ではない。社外との接点を増やし、客観的な視点で自分や今いる組織を見つめなおすこと。難しく考えすぎなくても、例えば、副業や、NPOや社外機会の接点を増やすなど、仕事とは直接関係のない環境に身を置くことからはじめてもいい。要は自身が、「社外」から必要とされる機会があるかどうかが大切だ。
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