ランク付けの人事評価が時代遅れすぎる理由 米国の一流企業が続々導入する新制度の本質
突然だが、あなたは自社の人事評価の仕組みに十分満足しているだろうか。満足していないという方は、仕事の成果を期末に一律でA、B、Cとランク付けをしない評価「ノーレイティング」(No Rating)という人事制度を聞いたことがあるだろうか。
アメリカでは、GEやアドビシステムズ、マイクロソフト、アクセンチュア、GAPなどの有名企業が次々この制度を導入している。近年では、アメリカの経済誌『フォーチュン』が年1回発表している米国企業の総収入上位500社、フォーチュン500のなんと半数近くの企業が導入しているともいわれている。
人材開発や経営・組織コンサルティングを数多く手掛ける筆者には、大企業からスタートアップまで、ノーレイティングの導入や導入後支援に関する相談が多く寄せられる。しかし、日本企業では導入がうまくいっていないケースも多いのだ。
本当にデキる人ほど報われない
今回は事例を挙げつつ、この「ランク付けをしない人事評価」の是非と実態をみてみよう。
従来型の評価制度(レイティング型)は、期初に設定した目標の達成度を期末にまとめて評価し、A~Eといったランク付けをして報酬を決める。なぜ、こうした制度から、期末に一律評価をしないノーレイティングへの変化が進んでいるのだろうか。
まずは、従来型の評価制度が形骸化しきっているからだ。特に、評価期間が半年や1年では長すぎるのだ。
昨今の事業環境の変化は速く、もはや半年や1年も前の目標が実態と乖離しすぎて意味をなしていないケースが増えている。上司も本人も半年以上前の目標など、もはや覚えていないことが多い。期末になり、上司の曖昧な記憶や直近の記憶に依存した評価やフィードバックに対して不満を感じたことがある人もいるのではないだろうか。
次に、本当に仕事がデキる人ほど報われないことだ。従来の評価システムでは、通常はA~Eなど評価の発生バランスは一定ずつ(ボリュームゾーンは真ん中のBやC)になりやすい。著しい成果を上げていても、評価の最大値(A以上)の評価はつかない。上司の権限で個人の給与を勝手に増やすわけにもいかない。そうなると本当にデキる人ほど、成果に見合ったまっとうな評価や報酬は得られず不満が募る。
かといって、ボリュームゾーンの真ん中の評価(たとえばC評価)を付けられた人のモチベーションが特段上がることもない。見方によっては、誰のモチベーションも上がっていない構造だ。だとしたらあえてランク付けをする意味がない、というのがこの評価方法の前提にある。
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