ランク付けの人事評価が時代遅れすぎる理由 米国の一流企業が続々導入する新制度の本質
2つ目のポイントは「報酬の決定権」だ。ノーレイティングでは、自組織のメンバーの報酬を決定する権限を現場の上長に与えるのがセオリーだ。
全社一律の評価・報酬制度を運用するのではなく、組織を預かる上長がチーム全体の報酬原資を与えられ、メンバーの仕事への貢献度合いに応じて、個々に差をつけて報酬を与える。1on1で日常的な対話をしているので、メンバーと評価についてすり合わせているはず。したがって、上長の報酬決定にも納得感があるだろうというのが考えの前提だ。全員が均等に頑張るよりは圧倒的な価値を発揮するメンバーに手厚く報いた方が、組織全体のパフォーマンスは最大化しやすい。
導入自体が目的になっていることも
しかし、この報酬決定も日本企業ではうまくいかないケースが多い。そもそも報酬というのはこれまで、ある種の聖域になっているため、ここに手を入れるのは抵抗感があるケースが多い。給与≒人の生活に影響を与えたくないという意識が強く、アメリカほど報酬に差をつけるという感覚が弱いためだ。
また、マネージャーが報酬を決定するということは、メンバーとの信頼関係が築けていない中ではとてもうまくいかない。ノーレイティングを導入しようとしたあるIT企業では、メンバーとの信頼がない中で、評価も微差しかつけず機能不全に陥った。
経営や人事の問題としても、報酬決定権限を現場に委譲しきれないケースも多い。現実的には報酬全額ではなく、賞与決定権の一定割合の委譲や、マネージャーの一次評価をベースにして経営陣とすり合わせ、最終的に報酬委員会で決めているケースもある。
3つ目の成功ポイントは、ノーレイティング導入の目的を明確に落とし込むことだ。導入自体が目的化していたり、背景や思想が統一されていないまま運用したりすると後で火を噴くことになる。そもそも人事・人材ポリシーが曖昧なまま導入に至るケースや、過去の制度で評価されてきた経営陣が本音では納得していないケースも数多い。
ノーレイティングは完全に評価をなくすことと、とらえられがちだ。だが、本質は変化が激しい環境の中で、これまで以上に個々のメンバーと向き合い、日常的に評価とフィードバックを行い、高速での成長や成果創出につなげていくということだ。本来マネジメントを行うとはどういうことなのか、を改めて問うているということでもあるだろう。
人事制度や評価は既得権益であったり、過去の負の遺産の集合体になったりしていることも多い。あなたの会社の評価制度は本当に納得のいくものになっているだろうか。社員の大半が評価制度に不満があるのにその制度をよりよく変えようとしていない会社に未来はない。「ノーレイティング」という言葉に踊らされず、ぜひ一度あるべき評価について改めて考えてみるきっかけにしてみてください。
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