及川光博「2点突破スペシャリスト」という凄み

イメージでくくれないビジネスパーソンの資質

過去を振り返ると、1990年代に織田裕二さん、福山雅治さん、江口洋介さんらを筆頭に、俳優とアーティストを両立させることがスタンダードの時代がありました。

しかし、もともと芸能界には、「俳優は演じることだけを追い求めるべき」「アーティストが俳優をやるのは邪道」という考え方があり、21世紀に入って以降は一般の人々にも「やはり本物の俳優は演技力が違う」「俳優は歌わないほうがいい」という思考が浸透。それまで俳優とアーティストを両立させていた人も、どちらかに大きく舵を切る形の活動に変わりました。

「1点突破」ではなく「2点突破」の有用性

その点で及川さんは希有な存在。言わば、「1点突破のスペシャリスト」ではなく、「2点突破のスペシャリスト」という道を選んで活動しているのです。まず俳優の仕事は、多くの人々が関わる協業であり、主観が求められるのはプロデューサー、ディレクター、脚本家で、俳優に求められるのは客観。一方、アーティストは個人の主観が重視され、特に及川さんはライブの構成、衣装、振り付け、セットなどをトータルプロデュースしています。

俳優もアーティストも「表現者」という意味では同じですが、及川さんは俳優=客観、アーティスト=主観を切り離して考え、セルフプロデュースのアプローチを使い分けることで両立。「演技か音楽か」のどちらかに舵を切るタレントが多い中、2点突破のスペシャリストとして活躍し続けているのです。

「仕事の集中と選択」「主観と客観の使い分け」の大切さは、ビジネスパーソンも同様。たとえば、1つのスペシャリストとして活動し続けると深い知識や経験を得やすい反面、そのビジネスから撤退を余儀なくされると、地位や収入を一気に失ってしまいます。

かといってゼネラリストになりすぎると、知識も経験も物足りず、代替が効く器用貧乏に陥りがち。及川さんが「表現者」という共通項のある俳優とアーティストの2点突破で勝負したように、ビジネスパーソンのみなさんも何かしらの共通項がある分野での2点突破を狙ってみてはいかがでしょうか。

ちなみに及川さんほど表現力があり、セルフプロデュースに長けた人なら、文筆や芸術の分野などにも活動範囲を広げたゼネラリストにもなれそうですが、「僕は良くも悪くも完璧主義」という性格と、「表現者の仕事に完成や終了はない」という本質を踏まえて、2点突破に留めている点もクレバーと言えます。

次ページ周りの登場人物を輝かせ続けている
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