50代が「転職・再就職」で超苦戦する根本原因 「空前の売り手市場」を鵜呑みしてはいけない

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そこで私が「人事部はそれを認めますか?」と聞いたら、「人事部は絶対認めないだろう」と答え、ようやく自分の要求の理不尽さに気づいたようだった。

仮にその人が「300万円でもいい」といっても、どこの企業も採用しないだろう。いくら人件費が安くつくといっても、35歳の人がやるべきポジションに55歳の人がつくとなれば、上司も使いにくいだろう。少なくとも人事部はそう判断する。それに5年経ったら定年である。「組織の若返り」を目指す企業が多いなか、そんな時代に逆行するような人事はありえないのだ。

このような想像に至らないところがすでに適応能力がないわけで、やはり50歳以上の転職には厳しいものがある。この適応能力やコミュニケーション能力こそがまさに「伸びしろ」であって、こうした能力があれば、知識やスキルはあとからすぐに身に付けられると企業は考える。それが20代、30代のほうが需要がある理由なのだ。

中高年の転職には「大きな壁」がある

建前を言えば、本来は求人票に「40歳くらいまで」「20歳〜30歳」など年齢制限を載せてはいけないことになっている。雇用対策法が改正され、2007年10月より事業主は労働者の募集および採用について年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならなくなったためだ。

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求人票には年齢不問としながら年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定したりするのは違法行為となっている。

しかし、求人側の企業は組織のバランスや収益における人件費の比率などを考慮して採用するわけで、その条件に合わなかったら書類選考にパスしないのは当然のこと。その条件のなかに年齢が大きなウェイトを占めるので、企業が年齢で差別するのは極めて当たり前なのだ。

転職においていちばん基本的な条件は、年齢である。30代と40代の間には壁があり、40代と50 代の間にはさらに大きな壁がある。

法律がどうあれ、この壁を越えて採用されることは難しい。転職希望者はそれを頭に入れ、それぞれの年代に応じた対策を講じる必要があるといえよう。

郡山 史郎 CEAFOM代表

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こおりやま しろう / Shiro Koriyama

1935年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、伊藤忠商事を経て、1959年ソニー入社。1973年米国のシンガー社に転職後、1981年ソニーに再入社、1985年取締役、1990年常務取締役、1995年ソニーPCL社長、2000年同社会長、2002年ソニー顧問を歴任。2004年、プロ経営幹部の派遣・紹介をおこなう株式会社CEAFOMを設立し、代表取締役に就任。人材紹介のプロとして、これまでに3000人以上の転職・再就職をサポート。

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