「山の神」と呼ばれた男の思考術 卒業から7年、今井正人が結果を出し始めた理由

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東北人の粘り強さを発揮

今井の実家は福島県南相馬市。高校までは福島県で過ごしてきた。東日本大震災で実家の1階部分が被災して、かつての栄光のトロフィーなどの多くが見つかっていないという。現在は福岡県を拠点にトレーニングを積んでいる今井だが、故郷の声援を走るエネルギーに変えている。

「現地の方々は思うように復興が進まないという状況です。元の生活に戻れないというのが精神的につらい部分だと思います。南相馬市出身の自分が1秒でも多くテレビに映って、名前を呼んでもらうことで、何か感じていただけばうれしいです。僕が何かを与えるというよりも、地元の方から力をもらうことが多くて、走っているときも後押しされていることを感じています。だからすごく感謝しています。

大学を卒業して7年が経とうとしていますが、オリンピックで勝負したいという気持ちは変わりません。少しずつですけど、確実に前進しているのは自分でも感じています。自分の進化を信じて、めげずにやってきて、次やったらもっと成長できるという思いでやってきました。以前はカン違いもあって、気持ちをうまくコントロールできませんでしたが、周囲の期待ではなく、自分がやりたいことを目指して、そこに向かっていこうという気持ちになったのです。自分が自分に期待できるような状態を保つことができれば、絶対に進化できると信じています」

箱根駅伝でスターになっても、偉ぶらず、マラソンで好走しても、もちろん驕ることはない。筆者は高校時代から今井を知っているが、その人間性は変わらない。ただし、ランナーとしての今井正人は一歩ずつ確実に“成長”している。東北人の「粘り強さ」と、九州男児の「男らしさ」を併せ持つ今井が、世界の舞台で活躍する日はそんなに遠くないだろう。かつて「山の神」と呼ばれた男には、“新たな称号”が必要になってきたようだ。
 

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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