優勝こそ逃したが、今井は2時間9分23秒の自己ベストをマーク。ついに壁となっていた2時間10分を突破して、大学4年時の箱根駅伝以来、実に7年1カ月ぶりに陸上競技専門誌の表紙を飾った。
「別府大分はペースが安定しませんでしたが、流れの中で走ろう、と思っていたので、ストレスなくレースを進めることができました。2時間10分を突破したことは、『やっと出たか』という感じですけど、正直、自分の中では『もっと出したかった』という気持ちが強いです。
『オリンピックで勝負する』という目標に、どのように近づいていくのか考えてやってきましたが、これまでは実力がないくせに、気持ちばかりが先行して、視野が狭くなっていました。理想と現状がかみ合わなくて、結果が出ない、ということが多かった。でも最近は、現状をいい意味で見つめられる余裕が出て変わってきましたね。自分との対話を大切にしながら、カラダをどこまで動かせるのか。常日頃考えることができるようになりました。それに、この3~4年は大きなケガもなく、トレーニングが続けられているのも大きいと思います」
マラソンでは2011年のびわ湖で初めて2時間10分切りのチャンスをつかんで以来、6度目のチャレンジで2時間10分の“壁”を突破した今井だが、近年は駅伝で「山の神」時代を彷彿とさせるような大活躍を見せている。元日に行われる全日本実業団対抗男子駅伝で、11年に最長4区で区間2位。12年は5区で区間賞。昨年は4区で11人抜きの区間賞で、区間新。今年も4区で12人抜きの区間2位。“山登り”という特殊区間ではなく、平坦区間での快走だ。
全日本実業団男子駅伝は、実業団チームとして年間最大の目標となる。元日決戦の前後1~2カ月に日本では主要のマラソンレースが行われており、チームの主力選手たちは、「駅伝とマラソンの両立」に悩まされる。1区間15~20km前後の駅伝と42.195kmのマラソンでは求められる質が変わってくるうえに、両レースに自身のピークを合わせるのが難しいからだ。しかし、今井は駅伝での走りをマラソンに持ち込むことで、壁を突破した。
「以前は駅伝の前に集中して、その後、『マラソンに切り替える』という気持ちが強かったのですが、近年は変わってきましたね。駅伝だからスピード練習を入れなきゃいけない、という考えではなく、土台ができていれば、いつでも走れるんだという感覚になっています。そのため、駅伝のための練習をするのではなく、マラソン練習をしていきながら、駅伝を刺激にするような気持ちで臨めるようになりました。それに、駅伝での攻めの走りが自分の持ち味です。マラソンでも駅伝の気持ちで走ることができるようになり、それが別府大分のレースでも出たと思います」
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