スター・ウォーズを「差別的」とする人の大誤解

多様性とはいったい何をもっていうのか

制服や足並みそろえた行進、純粋な血統。こうした多様性の否定は不寛容を生み、最悪の場合は規範からはみ出す者を下等な人種とみなして根絶しようとさえする。

排他的にならずに多様性を守ることは可能か

もし個々の人を判別することができなければ、誰も個人としての人格を持てないことになる。「私は誰?」という問いに答える最良の方法は、他者との違いを見つけることかもしれない。

少なくともカナダの哲学者チャールズ・テイラー(1931〜)ならそう答えるだろう。彼の著書から引用する。

「アイデンティティーとは何を意味するのかを考えてみよう。それはわれわれが誰であるか、われわれがどこから来たのかということである。このようなものとしてのアイデンティティーを背景にして、われわれの好みや欲求、意見、願望が意味を持つのである」

どこから来たのかを知れば、自分が誰かがわかる。言語や文化、信仰などが私を特定する手掛かりになる。だからこそテイラーの言う、「差異をめぐる政治」が必要になるのである。

「差異をめぐる政治」とは、要するに多様性を擁護する政治である。「われわれが認めることを求められるのはある個人や集団の独自のアイデンティティー、すなわち(中略)ほかのすべての人々からの区別なのである」とテイラーは述べている。

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排他的にならずに多様性を守ることは可能だろうか。ひっくり返していうなら、画一化せずに平等を実現することは可能だろうか。何を共通点とし、どこで個別性を特定するのか。

チャールズ・テイラーによると、「承認の政治」を実現してすべての人の権利を守るための方法は2つある。多様性の問題には2つの解決方法があるというのだ。

1つめは「普遍主義的な政治」である。これは各人の個別性に配慮せず、すべての人間を同等に扱うことである。

黒人も白人も、男性も女性も、ユダヤ人だろうが無神論者であろうが関係ない。女性も男性と同額の賃金を受け取り、同性同士の婚姻も認められ、黒人も白人とまったく同等の権利を持つ。フランスの「政教分離(ライシテ)」がこのケースである。どの宗教を信じるかによって、損得が生じることがないようにされている。

フランスにおけるライシテは宗教を私的な信仰にとどめることを強制し、信仰の象徴を公的な場で誇示することも禁じている。だがライシテを徹底することは、帝国のクローンのような画一性に向かう危険がある。

2つめの解決策は先ほどとは反対に、違いに配慮して差異に応じたルールをつくるというものだ。

食堂ではイスラム教徒に配慮した料理を用意し、パリテ(クオータ制)を導入し、女性や黒人への優遇措置を図る。つまり「これらの区別を異なる処遇の基礎にする」のだ。

ここでいう平等とは公平の意味である。条件の違いに配慮し、不平等を解消する。しかしこうした配慮は、逆に不公平となる場合も出てくる。

一部の人間だけが贔屓(ひいき)されていると思う人がいるからだ。共通点よりも相違点ばかり強調することによって、コミュニタリアニズム(共同体主義)に陥る危険もある。

ではどうしたらいいのか。答えることは難しい。確かなのは反乱軍は皆で生きるために異なる人種が手を結ぶことで「正義の象徴」となり、帝国軍はその画一性によって「悪を具現」している。

つまりスター・ウォーズは、多様性を擁護しているということである。

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