「悪」は人間の心の一体どこに眠っているのか

「スター・ウォーズ」が見つめる"善と悪"

”人間の中にある善と悪“について、スター・ウォーズの作中シーンをもとに考察する(写真:bfa.com/アフロ)
シリーズ最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』がいよいよ公開となる。もはや説明不要な世界的人気作品であるこのスター・ウォーズという作品は、壮大なエンターテインメントであるだけでなく、哲学的な観点から見ても非常に示唆に富んだものだ。
そんなスター・ウォーズ作品やジョージ・ルーカスの思想を考察するのが、フランスで人気の哲学者、ジル・ヴェルヴィッシュ。彼の近著『スター・ウォーズ 善と悪の哲学』より、今回は”人間の中にある善と悪“についてピックアップする。

人間は善人か? 悪人か?

沼や森に覆われた惑星・ダゴバでルークが修行中にヨーダは、彼をダークサイドの洞窟に連れてゆき試練を与える。細部はともかく、ちょっと思い出してみてほしい。ヨーダがルークを大木の根元に連れてくる。大木の根がからみあう中に、洞窟の入り口がある。

「そこはフォースのダークサイドが強いのじゃ。悪の領域じゃ。行くがよい」

後はもうご存じだろう。ルークはライトセーバーをもって恐々と洞窟を進み、ダース・ベイダーと対峙する。

ルークがそこで出会ったのは「悪」だったのだろうか。いや違う。ルークが悪の化身の首を切り落とすと、ヘルメットが落ちる。そして壊れたマスクの向こうに現れたのは、ルーク自身の顔だった。

つまり洞窟は、彼の心の内だったのである。彼が向き合うべき相手は自身の暗黒面であった。確かにヨーダはあらかじめ警告していた。そこにお前が見るのは、「自分自身だけ」だろうと。

結局、ルークはこのテストに失敗した。まずライトセーバーを持っていくことで、恐怖心を連れていってしまったのが失敗であり、憎悪に任せて相手を殺そうとしたことも失敗であった。武器も恐怖も捨て、試練に挑むべきであったのだ。

次ページフォースの暗黒面はカール・ユングの考えに発想を得ている
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