「悪」は人間の心の一体どこに眠っているのか 「スター・ウォーズ」が見つめる"善と悪"

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そしてこの動物的な部分を否認したり、無理に抑圧したりすることは避けるべきだとユングは説く。

「われわれはそういう影の部分を抜きにしてはまとまりのある全体を成していることができない」

そもそも自分ときちんと向き合わないからこそ、私たちは無意識界の「闇」に沈んでしまうのだ。

誰にでもダークサイドは存在する

『ジェダイの帰還』でデス・スターに向かって出発するとき、ルークは自分なら父を救えると信じていた。だがダークサイドから父を救い出すことは、父自身から父を救うことである。

「父さんの中に善の心を感じる。葛藤があるんだ」とルークは言う。それに対してダース・ベイダーは答える。「葛藤などない」。

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ユングによると、これはいわゆる悪人に特徴的なことであるらしい。「自分たちには心の影の面などないといって自慢するような患者がいる。自分の心の中には葛藤などないと断言する患者がいる」というのだ。

善人とは暗黒面がない人をいうのではない。誰にでも暗黒面は存在する。むしろ自分の中に悪があることを自覚しているのが善人であり、自分の中の悪を認めようとしないのが悪人なのだ。

完全な善、完全な悪を求めることが悪を生んでいる。自身が絶対に正しいと思い込み、他者を絶対悪とみなすのは宗教に限らず、何かを狂信する人や原理主義者に特徴的な行為である。

人は自分が正義を守る正しい存在だと信じることで、何をしても許されると思ってしまう。目的が正しければ手段は問われない、大義のためなら犯罪も許されるという考え方だ。

世界を敵に回すよりも、まずは自分の中の暗い部分、自分の欠点を認めるほうがいい。

ユングもこう言っている。

「人間が自分の本性の裏側をはっきりと見ることを学び知るようになると、それによって人間は周囲の人々をもよりよく理解し愛することを会得するようになるだろう」

ジル・ヴェルヴィッシュ 哲学者

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Gilles Vervisch

1974年、フランスのルーアン生まれ。ポップ・カルチャーをもとに哲学を語ることを得意とする。高校で哲学を教える傍ら、ラジオやテレビなどメディア出演も多い。

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