27歳でがんを告知された人に生じた心境の激変 「正直悔しい、でも感謝して精一杯生きたい」
周囲からはその能力を認められていましたし、近い将来は海外にも赴任したいと考えており、プライベートな時間は外国語の勉強に充てたり、体力づくりにジムに通ったりするような生活をしていました。
友人も多くいましたが、交流の目的はやすらぎではなく、自分を高めるために刺激をくれるような友人との時間を大切にしていたそうです。
つまり岡田さんにとって、「5年先、10年先、そしてさらに先にある未来の夢を実現すること」が人生の目的であり、そのためにあらゆる努力をいとわなかったわけです。
岡田さんは、進行性のスキルス胃がんに罹患(りかん)したことによって、自分に間もなく「死」が訪れることを知りました。「描いていた未来の夢」は決してやってこないということを悟り、日々の努力の先に目標に据えていたものが見えなくなったのです。岡田さんは大混乱に陥り、生きる意味がわからなくなりました。
そして岡田さんの中で新たな問いが生まれました。
「10年先がないとしたら、人は何のために今を生きるのだろうか」
最初は書店でさまざまな本を手に取ってみたそうですが、ほとんどの本が人間は長生きすることを前提に書かれており、むしろ気がめいってしまったそうです。
そんな頃、岡田さんは私の元にカウンセリングを受けるためにいらっしゃいました。苦しくて苦しくて、いっそ死んでしまおうと思っていたところ、担当医からがん患者の心のケアをする医師がいることを教えてもらい、1度どんなものか話をしてみたいということでした。
岡田さんは最初カウンセリングに対して半信半疑で、「あなたに私の気持ちがわかるのか」という疑いの目で私を見ているような様子でした。その背景には、自分より長生きできるであろう私をうらやむ気持ちがあったのかもしれません。
最初は岡田さんと信頼関係を結べるか心もとなかったのですが、私は今までの一通りのいきさつを伺い、次のような私なりの理解を伝えました。
「岡田さんは将来のために『今』を生きていたんですね。別の言葉で言うと、将来のために『今』を犠牲にしていた。だから『今』の生き方がわからない」
そうすると岡田さんは「その通りだと思う。自分はどうしたらよいか、一緒に考えてほしい」とおっしゃいました。少し私に頼ってみようと思われたのかもしれません。
そして、岡田さんが「様変わりした現実をどう生きたらよいのか」という課題に取り組むためのコーチのような役割を、私は引き受けることになったわけです。
ショックなことを経験した後の心の変化
「様変わりした現実とどう向き合ったらよいか」という2つ目の課題に取り組んだ先にはどのような世界があるのか。
心理学領域における心的外傷後成長に関する研究から、その人の考えには5つの変化が生じうることが明らかになっています(※参考文献:『心的外傷後成長ハンドブック 耐え難い体験が人の心にもたらすもの』(Lawrence G.Calhoun / Richard G. Tedeschi 原著編集、宅 香菜子/清水 研 監訳、医学書院)
それは、次の5つです。
① 人生に対する感謝
② 新たな視点(可能性)
③ 他者との関係の変化
④ 人間としての強さ
⑤ 精神性的変容
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