27歳でがんを告知された人に生じた心境の激変

「正直悔しい、でも感謝して精一杯生きたい」

岡田さんは「27歳の自分は健康な生活を送って当然だ」と思っていたのに、大して悪いこともしていない自分が進行性のスキルス胃がんになってしまったことに納得がいかず、「なんで私がこんな目に合わなければならないんだ」という考えが頭から離れなかったそうです。

岡田さんは激しい怒りを抑えきれず、叫んだり、物にあたったり、両親に八つ当たりをすることもありました。しかしいくらあがいても、現実は揺るぎなく目の前に立ちふさがり続けるので、怒るのにも疲れてきました。

やがて怒りの感情が徐々に収まってくると、今度は悲しみで気持ちがいっぱいになりました。悲しみは「自分にとって大切なものを失った」ときに生じる感情で、心を癒やす働きがあります。岡田さんは、それまで描いていた希望に満ちた未来を諦めなければならないことを考えると、涙が止まらなかったそうです。

岡田さんのように、大切なものを失った場合、喪失を受け入れるには時間とさまざまなプロセスが必要なのです。

茫然自失となり起こったことがにわかには理解できない時期、取り乱して泣き叫んだり理不尽な現実に怒りがこみ上げたりする時期、失ったものに目を向けて涙が止まらない時期、人生とはそもそも平等ではないんだという現実を理解してしみじみ泣く時期など、さまざまな様相を呈しながら少しずつ向き合うようになると言われています(※ 参考文献:『Cancer Board Square』2019年4月号(医学書院)P172─176「人はなぜ悲しむのか?」清水 研、白波瀬丈一郎)。

これを心理学の領域では「喪の仕事(mourning work)」と言いますが、こうした骨の折れるプロセスを経て、人はがんになる前に描いていた人生と徐々に別れを告げ、新たな現実に向けて歩みを始めると考えられています。

想定してた「10年後」がないとしたら「今」何をするか

1つ目の「喪失と向き合う」という課題が完全に終わることはありませんが、時間が経つ中で激しい負の感情が少しずつ様相を変え、「どうあがいても自分ががんになったという現実は変えられないんだ」という考えが出てきたとき、2つ目の課題への取り組みが始まります。

岡田さんの場合、病気になられるまでの生き方はとてもストイックでした。岡田さんは金融機関に勤めていて、責任感が強く、与えられた役割を果たすために努力をいとわなかったそうです。

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