27歳でがんを告知された人に生じた心境の激変 「正直悔しい、でも感謝して精一杯生きたい」

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怒りや悲しみも心を守るためには必要だ(写真:baona/iStock)

「怒り」も「悲しみ」も自分を守るために必要な感情

27歳で進行性のスキルス胃がんになられた岡田拓也さん(仮名)は、「あなたの病気はがんで、根治することは難しい」と伝えられた時、これが現実に起きていることだとは信じられなかったそうです。目の前の先生の説明が自分のことを言っていると思えず、ドラマでも見ているのではないかという感覚を持ちました。またその後の記憶が飛んでしまい、家にどうやってたどり着いたか覚えていなかったそうです。

がん告知を受けたときの衝撃の大きさは、ご自身がそのことをどれくらい想定されているかによって異なります。例えば、「そろそろお迎えが来そうだな」と思っている人ががんになった場合は、それほど動揺しないでしょう。一方で、自分ががんになることなど考えたこともなかった若い人の場合、大きなショックを受けます。

拙著『もしも一年後、この世にいないとしたら。』でも触れていますが、人間は想定をはるかに超える衝撃的な出来事に出合うと、心の機能がバラバラになってしまい、目の前で起こっていることを認識はできても、それが現実とは思えなかったり、記憶に定着しなかったりということがあります。

これを専門的には「解離状態」といい、がん告知に限らず、心のショックが大きかった場合にはよく経験される状態です。解離状態は、一気に激しい衝撃を受けることから心を守るために、必要な機能なのかもしれません。

岡田さんは、家に帰った後も放心状態で、その日はほとんど眠れなかったそうです。しかし、朝方少しだけ眠ったのちに目覚めたときに、「ああ、やはり昨日の出来事は現実なんだ!」という実感とともに、激しい絶望感が一気に襲ってきました。

岡田さんのように、解離状態を抜けて事実を認識すると、次に、怒りや悲しみといった感情が出てきます。怒りという感情は「不公平だ」とか「理不尽だ」と感じる出来事があると生じるもので、自分を守るために必要なものです。

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