また、住宅建設では、増税の半年前が契約の締め切りとなるので、今回のケースでは今年3月がピークとなった。戸建て注文住宅の受注動向をみると、確かに3月に「山」ができている。とはいえ、それほど高くはなかったし、その後は平常の水準に戻りつつある。これは増税後に、①住宅ローン減税の3年間延長、②「すまい給付金」最大50万円支援、③次世代住宅ポイント制、④贈与税非課税枠3000万円、などの特例を用意したからだろう。
他方、大型家電や宝飾品などでは、9月に顕著な売り上げ増加がみられた。これらの商品では、10月以降に反動減が生じているはずである。化粧品やお酒など、日用品の買い置きをした消費者も少なくなかったことだろう。だからやっぱり駆け込みは起きている。しかし、すそ野が広い自動車と住宅産業の影響が限定的だから、10-12月期の反動減はそれほど大きくはならないものとみる。
考えてみれば、2014年の増税局面はそれまで5%だった消費税が4月から8%になり、なおかつ2015年10月から10%に上がるという前提だった。つまり消費者は、「2年間で5%」の増税を想定していたので、自動車や住宅の駆け込み需要が大規模になってしまった。その点、今回は2%の1回限りであり、軽減税率も入っている点が大きな違いである。
実はこの点については、財務省内でも反省があるらしい。過去にEU加盟国28カ国が付加価値税率を上げたケースが109回あるが、そのうち3%以上の増税は12回しかなかったそうだ。「消費税、上げたいときは小刻みに」というのが、財政当局が「次の増税」を目指す際の手法となりそうである。
「街角の景気」はどうだろうか?
さて、景気の実相に迫るために、先日発表されたもう一つの内閣府の統計に着目してみよう。「景気ウォッチャー調査」の令和元年10月調査結果である。別名を「街角調査」ともいい、タクシーの運転手さんや外食産業の店長、就職雑誌の編集長など、景気に敏感な職種の全国2000人を対象に、アンケート調査を毎月行っているものだ。「景気は気から」と言われるが、この調査は全国各地の「気分」を伝えてくれる。
実はこの調査の隠れた「売り」は速報性にある。月末に行われた全国アンケートの結果が、翌月の第2月曜(祝日の場合は火曜日)に公表されるのだ。この調査は2000年に始まったのだが、もともとは「景気動向をもっと早く把握する仕組み作りを検討せよ」という堺屋太一経済企画庁長官の指示により誕生したという。
今回の10月分調査結果は、10月末時点の「街角景気」を伝えてくれる。現状判断DIは9月の46.7から36.7へ、実に10ポイントもの大マイナスとなった。ところが2~3か月後を示す先行き判断DIをみると、こちらは36.9から43.7へと大幅プラスとなっている。どうやら「消費増税」を強く意識して、「10月の景気は確実に悪くなった」「でも少し先になれば良くなるだろう」と反応しているようだ。
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