筆者は、仕事柄、「お金の扱い方」に関する書籍や原稿を書くことが多い。こうした文章を書いていると、「年齢別に最適なお金の運用方法がある」という先入観を敵視するようになる。
「年齢別に最適なお金の運用方法」が怪しいワケ
なぜなら、お金の運用の目的は「なるべく安全に効率良くお金を増やすこと」以外にあり得ず、運用する人の年齢や性別、投資経験、運用金額などの属性と「正しい運用方法」との間には、ほぼ関係がないからだ。
「個人のタイプ別に、適する運用商品が異なる」というイメージは、金融・運用業界がさまざまな商品を顧客に売りつけるために流しているデマだと思っていてちょうどいいくらいのものなのだ。
一方、お金の扱い方についてあれこれ書いていると、お金をいかに稼ぐか、お金を稼ぐ自分の能力や環境をいかに良いものにするかが重要であることを痛感する(自分に必要な貯蓄額の計算方法や、正しい資産運用の方法など。最新の方法については『人生にお金はいくら必要か 増補改訂版』山崎元・岩城みずほ著、東洋経済新報社をご参照下さい)。
「普通の人」は、働かなければ稼げないし、稼ぎ方(収入額の多寡だけでなく気分や能率も含めて)の良し悪しは人生の幸福度に大いに関係する。
だが、稼いだお金の扱い方は割合簡単に原則化できるのだが、稼ぎ方・働き方は、原則化することがなかなか難しい。
とはいえ、個人差はあるとしても、人生のそれぞれの段階で注意するといい「一般的なポイントのようなもの」があるように思う。「試論」の手前の「メモ程度の段階」ではあるのだが、今回は年代別の「人的資本戦略」について思うところ記してみたい。
なお、人的資本とは、将来の稼ぎの予想を「割引現在価値」(将来受け取れる価値を現在受け取ることにしたらどの程度の価値を持つかを表すもの)にして合計したもので、個人の経済価値を株価のように評価した概念だ。もし、自分の人的資本を、なるべく大きく育て、価値の減少を食い止めつつ、有効に経済価値として実現して行くことができるのなら、経済的に豊かに暮らしていけるはずだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら