6位はイオンフィナンシャルサービスの371件。今回から同社グループの数値として回答を得られた。同じベースによる前年度の353件から18件増加している(2017年調査によるランキングの数値とは異なるのでご注意ください)。同社は3位のイオン同様に「行動規範110番」を設置し、全従業員の行動規範に関する報告や相談等を電話や郵便、eメール等で受け付けている。この内部通報窓口も、社内・社外に設置している。
7位は日本電信電話で350件。前年365件から15件減った。同社は2002年に策定した「NTTグループ企業倫理憲章」の中で、「不正・不祥事を通報した役員および社員は、申告したことによる不利益が生じないよう保護される」と明記。通報窓口は「企業倫理ヘルプライン」として公開し、匿名通報や取引関係のある会社の勤務者からの通報も受け付けている。
そのほか、参考にしている「公益通報者保護法ガイドライン」の改正に対応し、第三者評価を実施するなど、通報しやすい職場環境の整備を進めている。
8位はマレリ(旧カルソニックカンセイ)で347件。2016年度から日本および海外でサプライヤー向けに通報窓口を拡大し、利用促進を図っている。2019年5月にイタリアの企業との経営統合が発表されたが、内部通報体制にも影響が及ぶのか、今後の展開に注目したい。
以下、9位ソニー300件、10位花王286件と続く。
内部通報の件数をどう評価すればよいのか
年間の件数が100件以上なのは、63位ヤマトホールディングス・富士ゼロックスまで。ランキングした残りの36社についても60件以上あり、ランキング100社目の通報件数が昨年よりも18件も底上げされている。
なお、冒頭で挙げた日産自動車は内部通報件数の回答は得られなかったが、同社の場合、公益通報者保護の観点も織り込み、日本の日産グループ各社で内部通報制度「イージーボイスシステム」を導入。2013年8月は外部第三者通報窓口「日産コンプライアンスホットライン」を設置し、2017年には新グローバル内部通報システム「SpeakUp」を設置している。
ちなみに、昨年に比べて、実質で最も通報件数が増えたのも1位のセブン&アイ・ホールディングス(202件増)である。12位のAGCが209件増となっているが、これは2017年度から件数の開示が連結ベースに切り替わったことによるものだ。ほかに100件以上増えたのは、グループ通報・相談窓口を集約して2017年度から一元管理しているという27位の三越伊勢丹ホールディングス(188件増)、26位の村田製作所(106件増)、29位のSUBARU(103件増)の3社だ。
権利保護に関する規定は今回ランキングした全社(100社)が制定。窓口は社外で一括窓口としているIHI以外はすべて社内に設置。さらにほとんどが社外にも設置していた。
さて、昨年の調査時も述べたが、この内部通報の件数はどの程度が適切なのか一般に使われている基準はない。ただ、『CSR企業総覧』編集部では2011年度からこのデータを収集してきた経験から、従業員数と対比するのが1つの見方であろうと予想している。
例えば、5位のホンダの2017年度の単独従業員数2万1543人を件数386件で割ると1件当たり55.8人となる。参考までに上位の製造業では8位のマレリ(347件)は単独従業員数4051人なので1件当たり11.7人。同様にすると、9位ソニーは8.1人、10位花王は25.6人、11位アステラス製薬は18.2人、12位AGC は22.9人となる。
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