地域文化どっぷり
祭りで出されるビールはエアランゲンとお隣のニュルンベルクの地ビール。昨今は日本のように全国で売り出すようなビール会社もあるが、基本的には地ビール文化がまだまだ強い。
エアランゲンにいたっては一時的には18の醸造所のある「ビール・シティ」だった。ビール祭りの会場は町の北部にある丘だが、冷蔵庫がわりの貯蔵トンネルがたくさん作られ今も残っている。
醸造所については現在ふたつのビール会社がある。1社はレストラン併設で作りたてのビールが飲める醸造所で、瓶売りはしていない。それでも徳利で日本酒を買いに行くような要領で、2リットルのビール瓶持参で買える。あるいは10リットルの樽入りのビールをパーティ用に買うこともできる(樽はあとで返却)。
「常連の中の常連」にいたってはレストランの一角にある専用の棚に錫のフタがついた陶製の「マイジョッキ」がおいてあり、客は専用棚のカギを持っている。
もう1社は通常の瓶ビールを販売している。市外でも販売はしているが、それにしても商圏はせいぜい半径50キロ。文字通りの地ビールだ。
両社はお互い商品のコンセプトが異なるので、競合することなく経営できているのだが、毎年祭りのために特別のビールをつくり、お披露目をする。
ドイツにおけるビールが地酒たる所以だなと思えるのが、250回目のビール祭りを迎えた2005年。180ページあまりの記念写真集が出版されたが、ビールのことはもちろんのこと、それ以外に歴史、建築、グルメ、音楽などさまざまな視点からの内容で、市営ミュージアムでも関連の展覧会が行われた。
さらには、ドイツでは社会や政治を話芸や音楽で皮肉るような「カバレット」というお笑い芸があるが、エアランゲンのご当地カバレリストがビール祭りを題材にした記念のお笑い作品を作っている。
地酒は地元の風土、技術、知識、職人によって培われた「地元文化」の集積という一面があるが、こうした記念年の催しには一気にそれらが表面化する。特に日本との比較でいえばドイツは地方分権型の国なので、ある意味「愛郷精神」につながる文化活動が行政レベル、市民レベルでかなり多い。そんな背景があるのでビールは町の顔のひとつとしての役割もあるわけだ。
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