第1回 これがドイツのビール文化だ!

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ビアガーデンは緑の中

日本でビアガーデンといえば、真夏のビルディングの上というイメージが圧倒的に強いが、ドイツのビアガーデンは木々に囲まれた庭の中だ。木陰の下でおしゃべりを楽しみながらのビールはドイツの「気持ちのいいライフスタイル」の代表格。 温泉につかって「日本人に生まれてよかった」と心地よさを堪能するような、あの感覚だ。
 またドイツの勤め人は仕事がおわるとすぐに職場とはサヨナラ。つまり仕事と自由時間がきわめてはっきり分かれていて帰宅も早い。だから平日でもお天気がよいと友だちや家族とでビアガーデンですごすわけだ。

それでも年に何度か職場仲間や遠くから来た仕事関係の人と飲食をともにすることはある。そして向かうところはビアガーデンということも少なくない。
 遠くから来たお客に地元のビールを紹介したりするのもこういう時だ。客人も「ほう、これがこちらのビールですか。それじゃあ、ひとつ試してみますか」という具合に話が進むわけだ。

もう一歩踏み込むと、ビールは修道院で発達した面がある。修道僧の断食中、液体ならよいということでビールが作られ飲まれた。
 修道僧というとすぐに宗教者と考えるが、ヨーロッパの大学が神学から始まったように、当時の知識人でもあった。文字を読み書きできたから材料の黄金率を試行錯誤できたのだろう。だから今でも修道僧を瓶ラベルのデザインに使っているところもある。
 またビアガーデンにしても元々修道院の醸造所だったというところも少なくない。ドイツの社会を見ているとキリスト教の影響がいたるところに目につくのだが、ビールも例外ではない。

ひるがえって現代のドイツの様子を見ると、地域の祭りの軸になっているのが「ビール」であり、町の文化としての「ビール」が強調される。ビアガーデンの楽しみ方もこころなしか日本よりゆったりしているように見えるが、これも1日のうちの仕事以外の時間を確保しやすいことが大きな理由のひとつだろう。
 「ドイツといえばビール」というイメージも、こういったことが集まって成り立っている。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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