今回も結論から申しますと、質問者のような方を欲しがっているベンチャー企業は、売るほどあります。銀行交渉、証券会社交渉は貴重な経験ですし、M&A経験もすばらしいです。筆者の投資先も必要としているので、詳しく話をさせていただければと思います。
ただし、質問者の方は「経営企画でM&A、資金調達(エクイティ、デット)、広報IRやその時々の特命業務を行っており」とおっしゃってますが、大事なところはどんな規模感であれ、自分ひとりで最初から最後までやったことがあることが重要です。たとえ特命プロジェクトでも、社内の誰かの業務を少しずつお手伝いする程度では、なかなか実務が本当に身に付かないので、いざベンチャーで「自分以外に誰も頼れない」状況になったときにしびれます。質問者の方はベンチャー企業にもいらしたことがあるのでよくご存じでしょう。
また、よくあるミスマッチは、ベンチャーの経営者が「この人、何でもできるから」と上場準備用の管理部長として採ったら、全然、自分で手が動かない人だったということです。これは大企業では業務が細かく細分化されており、特に年次が若いうちはなかなかチームリーダーとして全体統括や意思決定にかかわることがないということがあります。上場前のベンチャー企業の管理体制の強化業務などでは、外部の人間も使いつつ自分でどんどん意思決定して物事を決めていかないと進みません。これができる人とできない人に大きく分かれます。
何でもやるという心構えも必要
最近は商社などでも、いわゆるコースに乗ったエリート社員を、一度は子会社などで経営にあたらせて、経営の肌感覚を持てるようにしてから、本社に戻すということをしています。あまりにも大きな組織で、自分がいてもいなくても何も変わらない状況では、巨大な組織と事業の中の一部しか学べず、経営者にとって最も大切な全体感が身に付かないものです。それよりは小さくても組織のトップの経験をすることは、マネジメント人材へと成長するために有意義です。
大企業の子会社出向による人材育成に少し問題があるとすれば、中小企業では死活問題の資金繰りを親会社に任せてしまうこともあり、大切な資金繰りスキルが身に付かないことです。同様に大企業の経営企画部にいた、という方でも、中期経営計画の作成において、各事業部から言われた数字をインプットして取りまとめていただけの人と、しっかり市場予測を行い、事業部から出てきた数値の蓋然性を分析し、事業部トップと話し合ってきた人では、身に付いているものがまったく異なってきます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら