デジタル時代の新指標「GDP+i」が示す豊かさ デジタル化の進展で拡大した消費者余剰

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デジタル時代の新指標2:デジタル・ケイパビリティ・インデックス(DCI)

われわれは欧州のDESIを参考に、日本のデジタル度合いを示す指標としてデジタル・ケイパビリティ・インデックス(DCI)を考案し、そのトライアルとして日本の都道府県に適用してみた。DCIは、市民がデジタル技術を活用して生活満足度を高める潜在能力(ケイパビリティ)の大きさを表す。4つの大項目、「ネット利用」「デジタル公共サービス」「コネクティビティ」「人的資本」からなり、その内容は図のとおり。

4項目を1つの指数に合成するにあたって、都道府県別の生活満足度(NRIの生活者1万人アンケートより)との相関関係を見たところ、ネット利用とデジタル公共サービスとの相関が比較的高いことがわかった。

つまり日本では、市民のネット利用度が高いほど、また住んでいる町の公共サービスのデジタル化が進んでいるほど、生活満足度が高い傾向にある。

DCIは所得を補完する指標でもある。所得が上がれば生活満足度は高まる可能性が高いが、さまざまな研究によって、所得の影響度合いは徐々に減少すると言われている。

つまり、平均所得が高い自治体で市民の生活満足度を高めるためには、DCIを高めることが有効であろう。反対に、平均所得の低い自治体であっても、DCIが高まれば生活満足度も高まることが期待できる。

公共サービスのデジタル化が有効だ

われわれはDCIの4項目のうち、特に「デジタル公共サービス」に着目した。日本人の生活満足度との相関が比較的高いことと、「ネット利用」と比べてもまだまだ日本では向上の余地が大きいためである。

前出のように、北欧諸国は生活満足度とDESIの両方が高いが、これらの国々では公共サービスのデジタル化が非常に進んでいることにも注目すべきである。北欧はもともと高福祉国家であり、国民と国家の間の信頼感があるため個人データ授受の抵抗感が小さいこと、少子高齢化が進み、人口密度も低く、効率的な行政にはデジタル化が不可欠だったことなどの背景がある。

例えばデンマークでは、2001年時点ですでに国民共通番号とデジタルIDによる電子署名がはじまり、2011年には「デジタルポスト」と呼ばれるポータルを通じての行政サービス利用が義務化され、現在は96%の国民がデジタルポストを利用しているという。

バルト3国の1つエストニアでは、2001年に「X-Road」と呼ばれるデータベース連携プラットフォームが導入され、デジタルIDを用いた電子行政手続きが可能となった。現在は行政サービスの99%がオンラインで利用可能となっていて、会社設立の98%、税務申告の97%がオンラインで行われている。さらに国民はポータルを通じて、誰が自分のデータにアクセスしているかを確認でき、必要があればブロックすることもできるなど、データの市民主権が確立されている。

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