デジタル時代の新指標「GDP+i」が示す豊かさ デジタル化の進展で拡大した消費者余剰

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スマートフォンによるインターネット利用の普及で消費者余剰が拡大している(写真:metamorworks / PIXTA)
野村総合研究所(NRI)のデジタルエコノミー研究チームは『デジタル資本主義』(東洋経済新報社刊)で、GDP(国内総生産)などの従来の枠組みではとらえきれない「デジタルが生み出す経済効果」を「消費者余剰」の観点から計測した。今般、さらに調査研究を進め、デジタル資本主義の時代の経済活動を示す指標として「GDP+i」を、社会のデジタル化の進展度合いを示す指標として「DCI」を提案したい。

GDPに含まれない「消費者余剰」が拡大

野村総合研究所(以下NRI)は、日本で3年に1度、「生活者1万人アンケート」を実施している。これによれば、2018年に自分自身の生活レベルを「上/中の上」あるいは「中の中」とみなす日本人の比率は75%であり、2006年にはその合計が58%だったのに比べると大きく上昇している。

一方、同時期の日本のGDP(国内総生産)や平均賃金などの経済指標はほぼ横ばいなので、経済指標では説明できない生活水準の改善が起こっていることになる。NRIのデジタルエコノミー研究チームはその大きな要因として、デジタル技術による生活の利便性向上、経済学の用語を使えば「消費者余剰」が増大したためだと考えている。

消費者余剰とは、消費者がある商品・サービスに対して最大限支払ってもよいと考える金額と、実際に支払った価格の差分であり、わかりやすく言えば消費者の感じる「お得感」である。「お得感」は個々人の頭の中に存在していて、実際に貨幣のやり取りが発生するわけではなく、GDP(国内総生産)には捕捉されていない。

このように概念的な存在ではあるが、私たちの日常生活に目を向けると、ここ数年で、インターネットの価格比較サイトを通じて最安値のお店を簡単に探せるようになり、スマホで無料の地図サービスや検索サービスを常時利用でき、SNSを通じて友人・知人とつながることができるようになっている。こうしたデジタル化の進展によって、莫大な消費者余剰が発生していることは想像に難くない。裏返せば、無料や低価格のサービスが増えたことがGDPの伸びを抑制しているともいえる。

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