映画「永遠の門」が迫るゴッホの創作プロセス 単純な伝記映画でなくゴッホ視点に立つ内容

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なお余談だが、過去にゴッホを演じた俳優で、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのは、1956年の映画『炎の人ゴッホ』 に主演したカーク・ダグラス以来のことになるという。 

劇中、ゴッホは景色を目に焼き付けるために、自然の中を駆け回ったり、あちこちによじ登ったりもしている。現在、デフォーは64歳だが、その演技は非常に若々しいものになっている。

スタッフが総力をあげて、130を超えるゴッホの絵を描いている ©Walk Home Productions LLC 2018

彼は撮影前から南フランスのアルルの大地を歩き回り、ゴッホの役作りに活かしたという。シュナーベル監督も「ゴッホは37歳になる頃にはぼろぼろだったし、ウィレムは申し分のない体をしている。非常に要求の多い役だけれど、ウィレムは体力にあふれていて、骨の折れる行動すべてをこなしてくれた。彼の役柄に対する深い探究、身体的スタミナ、想像力のおかげで、作品は脚本をはるかに上回るものになった」と称賛する。

さらにゴッホという役に対して、肉体的、感情的、本能的に向き合うために、デフォーは、画家のシュナーベル監督からマンツーマンでレクチャーを受けたという。

「芸術とはなにか」を問いかける

「これはゴッホについての映画であると同時に、絵画についての作品でもある。だから私にとって役作りの重要な部分は絵の描き方を学ぶことであり、物の見方を学ぶことだった。キャラクターがしていることを実際にやって役作りをするのは効果的だ。そうすることで、対象がどんな人物かを解釈するのではなく、対象の中に宿るようになるんだ」とその役作りについて明かす。

また、本作に登場する絵も、シュナーベル、デフォー、そして画家チームが力を合わせて、130を超えるゴッホの絵を描いたものだという。

劇中、ゴッホはしばしば「何を描いている?」「なんで絵を描くの?」といったぶしつけな質問を投げかけられる。それはあたかも「この社会において芸術とは何なのか?」「芸術家の役割とは何なのか?」と問いかけているかのようだ。それゆえに「この目に映る美しいものを伝えたい」と思いを吐露するゴッホの姿が感動的だ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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