「駄目なマニュアル」が組織にのさばる深刻度 世の中、役に立たないマニュアルが多い

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世の中にはなぜ「駄目なマニュアル」が数多くあるのか? 写真はイメージ(写真:CORA/PIXTA)  
ミスに悩む企業の多くで、マニュアルに深刻な欠陥を抱えているが、気づかれずに放置されている例が多い。
わかりやすいマニュアルを生み出すには、作文だけでなく、作業の全体的かつ総合的な改善が必要だ。
長年、人間のミスの研究を続けている中田亨氏の著書『「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因』から一部抜粋のうえ、紹介する。

歪められるマニュアル

マニュアルの本来の目的は、「作業に携わる読み手が、自分の要望に応じて、正しく状況を判断し、間違えずに操作ができるようにするため、情報を与えること」と言える。だが実際には、理想とは異なる、時には「邪悪」ですらある目的で、マニュアルが作られることがたびたびある。

仕方なく作ったマニュアル

「マニュアルを添付すること」と、法律や規則が要求していたり、発注者から求められているので、やっつけ仕事で作った文書をマニュアルと称して付けることがある。

ソフトウェア制作会社が手を抜く場合、ソフトウェアの取扱説明書と称して、画面のキャプチャ画像を何の工夫もなくべたべた貼りつけただけの、紙芝居スタイルの説明書を作ることが多い。「あるボタンを押すと、別の画面が現れる」という情報の単なる羅列である。

紙芝居型のマニュアルは非常に使いづらい。そもそも内容がかったるい。各画面でどのボタンを押せばよいかは、見ればわかるものだ。「送信画面が現れたら、送信ボタンを押します。これで送信できます」という言わずもがなの情報だけで、マニュアルのページを埋めている。

また、そもそも紙芝居は、読者を正しい手順に誘導することに不向きである。例えば、店への行き方を写真の紙芝居風に羅列して説明しているウェブサイトをよく見かける。正しいルート上で出くわす分岐点だけを写真に撮って、紙芝居に仕立て、どの分岐に進むべきかだけを指示するという方式だ。

だが、これでは正規ルートにいるときにしか使えない情報ばかりになってしまう。何かのはずみで一度でも正規ルートを外れて脇道に入ると、その後は何の誘導もなくなってしまう。

本来なら、ユーザーが安心して楽に操作できるようにするため、必要な説明を丁寧にするべきだ。例えば、修正の仕方や、途中結果の確認方法などの手順である。そこまでは手が回らないと見えて省略してしまう制作会社が多い。ソフトウェア制作会社には大小さまざまあるが、大手でも、このスタイルのマニュアルを作って平然としているところがある。

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