「自分は発達障害じゃない」と言い切れますか うつ病として治療されるケースが実際にある
両親の間に2人姉妹の妹として生まれ、乳幼児健診では発達などの遅れが目立つことはありませんでした。地元の小中学校では成績はよく、友達も多く、本人は「とくに困ることはなかった」と言います。
しかし、理由なく友達が離れていったり、無視されるようなことがあり、数日間学校に行けなくなることが何度かありました。運動は好きで、中学から運動部に入っていましたが、ケガが多く、レギュラーメンバーにはなれませんでした。
大学のバレーボール部が廃部になってしまった理由を聞くと、部の存続のために定期的に提出が必要な書類を出し忘れることが続き、授業の時間割との都合でやりくりできず、部活動の委員会にも参加できないことが続いてしまったといいます。
また大会の申し込みを忘れてしまい、部員が大事な大会に参加できず顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったこと、部員全員に連絡をして定期の集まりを開催したり、練習場を予約したりすることもできないことなどが原因でした。
個人的な生活では実家を出てアパート暮らしをしていましたが、部屋の掃除や片付けができず、交際相手からは「雑すぎる」「なんで最低限の片付けもできないのか」「やるって言ってやらないのをやめてほしい」などと繰り返し言われました。本人もすぐカッとなり、相手に対して言うつもりのないことを口走り、ひどいけんかになってしまったということです。
本人の前で「髪の毛が5本ですね」
その後、母親とともに来院してもらい、詳しく発達歴を尋ねたところ、「おっちょこちょい」「我慢弱い」「思い立ったらすぐに行動する」子どもで、よく順番が待てずに列に割り込んでしまったり、小学生のときはしゃべりすぎてよく先生に怒られたり、忘れ物が多く、ぐちゃぐちゃになった提出プリントが期限を過ぎてランドセルから発見されることも珍しくなかったということでした。
また、思ったことをすぐに発言してしまう癖もあり、親戚のおじさんが訪ねてきた際に「髪の毛が5本ですね」と本人の前で発言し、母が大恥をかいた出来事も話してくれました。
これらの幼少期の様子からは、不注意と衝動性があることがわかります。本人に改めて、思っていることをすぐに口にしたり、ほかの人の話に割って入ってしまうこともあるのではと尋ねると、「小さいときからそうだったから、あんまり考えなかったけど……」と前置きした後に、振り返ればこれらが原因で友人関係が悪化してしまった可能性があるということでした。
とくに大学に入ってからは、これまでの気心が知れた仲間ではなく、まだあまり親しくない友達にも過度に話しかけたり、自分の話ばかりしたり、「すぐツッコミを入れまくった」ため、皆が離れていってしまったようでした。
以上の結果から、彼女はベースに不注意優位型のADHDがあり、うつ病を併発したと考えられました。