予備校教師としての私の意見
生徒側にとってもこれは大きなメリットです。英語と真剣に向き合っている優秀な生徒にとっては、バランスがよく、実力をストレートに反映する実用的な英語テストで早期に満点を確保できるのであれば、これほどうれしいことはないでしょう。学部別に特化した問題研究や対策をやらなくてすむわけですから。実力を示すチャンスも複数回生まれます。また、遠回りをせずに、海外への大学でも使えるグローバルな英語力を身に付けることができるわけです。日本の大学入試の現状を考えると、最も現実的な入試改革案がこの「みなし満点制度の導入」ではないでしょうか?
「みなし満点制度」か「最低基準点制度」か、という議論もあると思います。「最低基準点制度」とは、出願要件として「○○テスト~点以上」という基準を設けることです。たとえば、来年の上智大学の全学入試では、出願要件として学部ごとにTEAPの最低基準点が設定されます。満点が付与されるわけではなく、出願の最低条件です。
あくまでも予備校講師としての私の意見ですが、この制度には受験生にとっての「うまみ」があまりありません。ほとんどの学生は上智大学だけを受験するわけでなく、早稲田大や慶応大と併願します。とすると、学生としては、今のところ上智大にしか使えない2~4技能のTEAPの勉強も、リーディング1技能の難易度が突出した早慶の一般入試の勉強も両方しなければならなくなるわけです。
また、TEAPで基準点を超えてもその部分は評価されないので、頑張っても事前に優位性を確保することができず、ほかの教科でまたゼロから二度目の競争をしなければなりません。1次選抜、2次選抜のような形になるわけです。さらにその2次選抜の時期には早慶の入試が重なります。そうすると結局、TEAP自体には魅力を感じても、現実的選択として、受験者は早慶に流れてしまうという結果になりかねません。
「最低基準制度」はすべての大学が横並びで実施しなければ、導入した大学が受験生に避けられてしまうという残念な結果になってしまう可能性があるのです。日本のように、個別の大学が入試の仕組みを決め、受験生獲得競争をしているところでは、現実的な選択としては「みなし満点制度」を複数の外部テストを使い導入していくのが、大学側と受験生側、双方にとってメリットが大きい選択になると思います。ただし、これはあくまでも私の個人的な意見です。
これからそれぞれの大学が、どのように外部試験を活用していくのか、大学の先進性を、期待して見守っていきたいと思います。
参考文献
「企業が求める英語力」朝日出版
「提言 日本の英語教育:ガラパゴスからの脱却」光村図書
「CAN‐DOリスト作成・活用 英語到達度指標CEFR-Jガイドブック」大修館書店
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