韓国の「英語教育大改革」、失敗か? 英語をめぐる韓国のドタバタ劇

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英語教育改革の先頭を切った韓国。しかし、その大改革はわずか5年で終了した(写真:ロイター/アフロ)

韓国の英語教育改革が頓挫しています。5年間の年月と100億円にも及ぶと言われる巨費を投じ、日本の英語教育改革のモデルにもなるとも期待されたNEAT(国民英語能力試験)に朴槿恵(パク・クネ)政権がストップをかけました。この大実験の結果は、日本の英語教育改革の大きな参考になると思っていただけに、私もたいへん残念です。日韓の架け橋となるジャーナリストを目指す日本在住の留学生、パク・ホンギュウくんの協力を得て詳細を取材しました。

韓国英語教育大改革に朴政権がストップ

読解・和訳・文法に偏りすぎた大学入試の英語問題を是正するために、日本でも、外部試験により大学入試を代替しようという動きが強まっています。英検やTOEFL、TOEIC、G-TEC、TEAPなどの言葉が、連日、飛び交っています。今では、アジアの中で、いや、世界の中でも、英語優等生と言われる韓国。日本の英語教育が今進もうとしている道を1990年代から進んできました。そして、この韓国では英語教育改革の最終形として、100億円を超えるとも言われる巨費を投じてNEAT(国民英語能力試験)を推進。この試験を中心とする英語教育の大改革が進行中でした。

韓国では、日本よりも積極的にTOEFL(4技能)や韓国独自のTEPS(2技能)という実用的資格試験を用いた特別入試が早くから行われてきました。また、個別の大学が英語の入試問題を作るのではなく、基礎的な能力に関しては統一試験(2技能)で測定されています。しかし「TOEFLやTOEICのような海外の試験に依存しすぎることを避ける」、また、「4技能を均等に試すことが必要である」という認識から、韓国独自のNEATという4技能試験がスタートしました。この試験を中心とする大改革は、韓国の英語教育を根本から変えると期待されていました。

NEATはTOEFLiBTと同様の4技能を均等な評価で試す、パソコンとインターネットを使った形式の試験です。高校生は主に2級と3級を受験する予定でした。また、前政権の計画では、この試験により大学入試の英語を代替する予定でした。つまり大学入試から科目としての英語をなくし、2015年から、NEATにより、完全に代替する予定だったわけです。

2年前に韓国を訪れ、取材した際には、書店の1コーナーをNEAT関係の対策書が埋め尽くすほどの盛り上がりようでした。NEATが大学受験を代替することは、疑いようのないことのように思われました。

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