「価値観の共有」を「気が合う」と勘違いする日本人
『100円のコーラを1000円で売る方法3』は、国内中堅会計ソフトメーカー駒沢商会の商品企画部長だった与田誠が、会計ソフト世界トップのガンジーネットに引き抜かれたところからスタートする。
ガンジーネットCEOのサニル・ガンジーは、業界でも名高い与田をガンジーネットの日本法人社長として獲得するために、ヘッドハンター経由で会合をセットした。サニルは握手の後、次のセリフで会話を切り出す。
「ヨダさん、あなたは世界の中で、日本の市場をどのように認識していますか?」(『コーラ3』27ページ)
ここで、サニルが面談の目的やガンジーネットの理念には一切触れていないことに注目してほしい。その後の与田の答えに対しても、サニルはあくまで質問者に徹している。なぜだろうか。
それは、この2人が会った目的を考えると理解できる。サニルは、ガンジーネットの理念を与田に伝えるつもりは毛頭ない。まして親睦を深めるために会うのでもない。サニルが与田と会った目的はただひとつ。それはお互いの考え方と価値観が合っているかどうかを確認することである。
サニルが「イエス/ノー」で答えられる質問ではなく、オープンクエスチョンに徹したのも、これらの背景を考えるとわかるだろう。仮に与田がガンジーネットの理念に共感しても、自分と価値観が共有できない人物であれば意味がない。
ユーザーの要求水準の高い日本市場攻略が、グローバル市場でさらに飛躍するための試金石だと考えていたサニルにとって、与田が日本市場をどう見ているか。課題はどこにあって、それをどう打開するのか。与田自身の考え方を見極めることが最優先だったのだ。
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