スコアの信頼性が高い試験は?
さて、試験の信頼性の確保という観点からの検証ですが、TOEFLなど、ETSが作成するテストにおいては、IRT(Item Response Theory:項目応答理論)が用いられ、スコアの信頼性が確保されています。IRTを導入することによって、同じレベルの受験者が2度テストを受けた場合、ほぼ同等のスコアが出ることが期待されます。問題や難易度の当たり外れによる変動を最小限に抑える努力がなされているわけです。日本では、英検協会によるTEAPとベネッセのGTECが、このIRTを用いた得点の調整を行っています。
IRTを用いたテストの場合には、毎回の問題は回収され、開示されません。スピーキングテストの信頼性の確保に関してですが、TOEFLやTEAPのような試験では、受験者の音声は記録され、複数の採点者によって、coherence(一貫性)、pronunciation(発音)などが、項目別に評価され、その値が平均化されたものがスコアになることによって、信頼性が確保されています。
一方、英検の場合は、面接員によるその場での項目別の評価の合計により、合否の判定が決まります。会話は録音されません。面接員の数は準1級以下の級では1名、1級では2名です。面接員は、適宜Calibration Programという研修を受け、これに合格しなければなりません。
この5つの点から絞り込んでいくと、以下のテストが大学入試における、入試外部試験使用候補となると思います。
例えば、国際教養大では、実際にTOEFL iBT、IELTS等の試験での高得点の保持者や英検準1級の取得者をセンター試験みなし満点としています。これらの試験を用いた、みなし満点で圧倒的な優位を受験者に与えるからには、公平性を確保するうえで、みなし満点の基準は実際に試験の難度よりも上に設定する必要があるだろうと思います。センター試験よりも、英検準1級は難しい試験ではありますが、だからこそみなし満点を与えることができるのだと思います。みなし満点は「そこまでのスコアや資格を取得して実力を高めているのだから、本試験を受けても満点近くはとれるだろう」と多くの人が納得するラインに設定する必要があります。したがって私自身は、英検準1級によるセンターのみなし満点は適切だと考えます。
さて、この外部試験によるみなし満点制度は、センターだけでなく、一般入試や2次試験の英語問題に適用された場合に、大学側にも受験者側にも大きなメリットを生むと思います。まず、大学側のメリットですが、現在ある入試の仕組みを大きく変更することなく、たとえば「2年以内に受験した、TOEFL iBT 80点(各技能15点を下回らない)/ 英検1級/TEAP 340点(各技能60点を下回らない)の合格証を願書に添付した場合、英語科目は満点を付与する」とすれば、これらの要件を満たす英語が得意な生徒たちがこぞって集まってきます。もちろん、他教科も一定の点数をとらなければ合格はできないわけですから、英語だけしかできない生徒は合格できません。現在の試験を存続させ、仕組みを大きく変えることなく、グローバルに活躍できる学生の予備軍を集めることができるわけです。
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