英語の「外部試験導入」は、改善か?改悪か? 大学入試英語は本当に変わるのか?

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4技能のバランスがよい試験は?

まず①を検証してみましょう。LRSWはListening, Reading, Speaking, Writingの頭文字です。文法・語彙問題や整序英作文等は受動的な技能を試すものなので、Rとカウントします。以下は主要なテストのLRSWのバランスです。最もバランスがよいのは、TOEFL iBT、TOEFL Junior Comprehensive、TEAP、 IELTS、 GTEC CBTで、4技能はほぼ均等評価です。新しい試験ほど、この均等評価が実現されています。次いで英検1級、英検準1級。3技能でGTEC for Students、英検2級、英検準2級。2技能で、TOEFL PBT(R:L)、TOEIC (R1:L1)センター(R4:L1)となっています。私は、せっかく外部試験を活用するのなら、4技能試験を選択すべきだと思います。

大学入試に適したレベルの試験は?

さて次に②のCEFRレベルです。CEFR(Common European Framework of References)とは世界共通の言語能力のレベル表のようなもので、上から C2、C1、B2、B1、A2、A1となっています。

おなじみの英検に級に合わせると、およそ、C1→1級合格者、B2→準1級合格者、B1→2級合格者、A2→準2級合格者、A1→3級合格者となります。ベネッセが実施する3技能試験、GTEC for Students(2011年度:受験者49.5万人)の結果が示すところでは、日本の高校生の大半はA2以下のレベルで、平均はA2の下のほうだと推定されています。B2以上の生徒はほんのわずかです。また、B1、A2レベルの2技能試験であるセンター試験の平均点が、毎年およそ120点くらいであることからも、高校生の大半はA2レベルに集中しているだろうと推測できます。しかし、センター試験など、大学受験による選考の対象となる中心グループは、A2〜B1レベルの生徒となるでしょう。また、難関大学受験者もB1グループだと考えられます。

実際、ベネッセグループの調査でも旧帝大合格者の多くはB1レベルに属しているとの結果が出ています。どの試験を使用するかを決定する際には、その試験が受験者のレベルに合っているかを考慮する必要があります。

対象となる受験者にとって難しすぎる試験を使用してしまうと、判定スコアが低くなりすぎてしまいます。たとえば4技能400点満点の難易度の高い試験を使って、英語が苦手な受験者の実力を測ろうとしても、判定スコアを、たとえば150点まで下げなければならなくなるかもしれません。そうすると、もはやSWが0点でも、LRで合格ラインをクリアすることも可能になってきます。また、予備校的な取捨選択などのテクニックでも低い点なら取れてしまうということが起こるでしょう。私の感覚では、受験者の平均が50%前後、合格判定ラインが70~80%くらいになる試験が対象とマッチした試験だと思います。

超トップレベルの一部の学生B2~C1にはTOEFL iBT、IELTSや英検1級を選抜に使うのが適していると考えられます。海外への留学を視野に入れた場合、TOEFLかIELTSの選択となるでしょう。レベル的にはTOEICも合っていますが、TOEICは③のTLUドメインが学生とはずれているので、入試に適したテストとはいえません。

次に難関大学を受験するB1レベルの学生ですが、このレベルに適した試験は、TEAP、TOEFL Junior Comprehensive、GTEC CBT、英検準1級だと考えられます。現時点で偏差値55以上の難関大学の入試問題の代替とするのであれば、これらの試験が最もレベル的に適した試験だと考えられます。

中位以下の大学の受験者はA2, A1レベルがほとんどになると考えられます。TEAP、TOEFL Junior Comprehensive、GTEC CBT、英検準1級はこれらの学生にはかなり難しく感じられるでしょう。平均スコアも50%を下回ると予想されます。A2レベルより下に適合した試験は現在のところ英検準2級とGTEC for Studentsの各レベルだと考えられます。

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