自然災害後の住宅復旧がなかなか進まない事情 住宅の屋根補修にかなり時間が必要な理由
住宅被害の完全な復旧には時間がかかりそうだ。地震と台風という違いはあるものの、2018年6月に発生した大阪北部地震の状況をみると完全復旧への困難さがうかがえる。JR京都駅から新大阪駅方面に向かう新幹線に乗車していると、いまだに所々に屋根の上にブルーシートを掛けられた住宅が見られる。
これは、地震発生から1年以上が経過した今でも、屋根の補修が済んでいない住宅が残っているためである。近畿圏にお住まいの方や、東京・大阪間の移動が多い方の中には実際にご覧になった方もいるだろう。
大阪府防災・危機管理指令部のまとめ(2018年11月2日付)によると、同地震の住宅被害は全壊18棟、半壊512棟、一部損壊5万5081棟となっている。このうち、屋根の損傷が一部損壊の中でどのくらいを占めるか、そして未補修の住宅がどのくらいあるか不明だが、相当数であることは違いない。
修繕が進まない原因として、屋根や瓦の補修工事を行う事業者・職人が不足していること、仮に見つかっても工事件数が多いため補修まで時間がかかっていること、費用が高額であることなどが指摘されている。
瓦屋根の出荷が減り、職人も不足
そもそも、陶器瓦の出荷量が減っている。全国陶器瓦工業組合連合会の統計によると、粘土瓦の年間総出荷量は2015(平成27)年が3億7198万個で、1973(昭和48)年の21億2989万個の約6分の1だ。
これは日本の住宅に採用される屋根材の主流が、陶器からスレート(繊維で補強した薄手のコンクリート材)などへと替わったことによるものだ。陶器よりスレートのほうが軽量で、施工が容易、安価であること、補修しやすいためである。
陶器瓦の出荷事業所(いぶし瓦の場合)も1967(昭和42)年の3392事業所から、2015年には98事業所にまで大きく減っている。このことが表すのは、陶器瓦工事を行う事業者、職人が大きく減っているということだ。
もともと、住宅を含む建設業界は少子高齢化の影響を受け、慢性的な労働者不足。なかでも、大工をはじめとする職人の不足は深刻化している。以上のことから大変残念なことだが、台風15号で屋根に被害があった住宅の場合も、補修が完了するまでに相当の期間がかかると考えられる。
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