ホームレス、人知れず亡くなる彼らの過酷さ 病気だけでなく災害や事件とも隣り合わせ

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「俺の小屋のところまでは、絶対に水位は上がらない。それは俺がいちばん知ってる。もう5年も住んでて1度も水が来ていないんだから」と自信たっぷりに語っている人もいた。

しかし大きな台風が来たときは、河川敷全体が冠水してしまうこともある。洪水の際の水の跡が残っている小屋も多い。

冠水した場合、小屋や持ち物が流されてしまうこともあるし、逃げずにいた人も流される場合がある。

2005年頃、川崎競馬場の近くにテントを建てて住んでいたホームレス(50代)に話を伺った。彼の知り合いは、多摩川の河川敷に住んでいて台風の被害にあったという。

「嵐のときにはいつも増水するんだけど、そのときは上流でダムが放流しちゃって、鉄砲水みたいになっちゃったんだって。そいつはテントごと流されちゃった」

濁流に飲み込まれ、知り合いはそのまま下流へと流されていった。

「そいつが言うには水は怖くなかったけど、流木が怖かったって。すごいスピードで流れてくる流木にぶち当たったらそれでお陀仏だからね」

僕は名古屋出身なので、小さい頃は親族や先生に伊勢湾台風の被害をよく聞いた。中でも怖かったのは、道路を流れてきた流木に当たって大勢が亡くなった話だった。

「そいつは運よく助かったけど。そのときは、6人くらい行方不明になってた。住所不定無職の人がいなくなっても、大きなニュースにはならないけどね。でも本当はもっと(亡くなった人は)たくさんいたかもしれないね。そもそもどこにどんな奴が住んでいるか、明確には誰もわかっていないんだから」と、彼は言った。

ある日現れた、若いホームレス

2013年頃、多摩川の河川敷に小屋を立てて住む男性(70歳)に話を聞いたことがある。

彼が住む小屋はかなり年季が入っていた。小屋は彼自身が作ったという。

彼の小屋の隣には、まだ真新しい小屋が建っていた。ホームレスの小屋は、流されてきた廃材などで作ってあることが多いが、その小屋は新品の材料で作ってあるように見えた。

「ある日『横に小屋を建てていいですか?』って言われたんだ。俺よりはちょっと若い人だったと思う。別にそもそも俺の土地じゃないし、構わねえと思うよって言ったら、黙々と小屋を建て始めた」

その小屋はとても几帳面に、丁寧に作られていたという。彼はとても感心したと言った。

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