引受人が現れない場合、合葬にされる。例えば川崎の場合、川崎市高津区にある無縁納骨堂でなされる。火葬や官報の掲載料などの費用については、自治体が立て替えることになる。
ホームレスがたくさん住んでいる、いわゆるドヤ街でも悲劇は日常的に起こっている。
2013年頃の真夏に、僕は東京のドヤ街である山谷を取材していた。
明治通り沿いの歩道に男性が仰向けで寝ていた。ドヤ街ではよくあることなので、とくに気にとめなかった。多少顔色が悪いかな?と思ったくらいだった。取材を終えて戻ってくると、救急車が到着していて彼を運び入れていた。
一部始終を見ていた男性に話を聞くと、「いつの間にか亡くなっていたみたいだね。酔っ払って日向で寝ているうちに熱中症になったんじゃないかな? 夏場は危ないよね」と淡々と言う。ドヤ街ではたまに人が亡くなっているのを見るので、慣れっこになっていると言われた。
ドヤ街では8月に夏祭りが開催されることが多い。路上生活者、日雇い労働者や、支援団体などの人たちで盛り上がるお祭りだ。
はなやかで楽しいお祭の片隅には、過去1年以内に亡くなったホームレスの写真が貼り出される。壁に何十枚も貼られた写真を見て、人知れずこんなに亡くなっているんだといつも驚く。
死因で最も多いのは「がん」
僕が1999年に名古屋の笹島で開催された夏祭りを取材しているとき、どのような人がどのような死因で亡くなったのかを発表していた。
実に44名が亡くなったのが確認され、死因の1位はがん、2位は心臓病、3位は自殺だった。そのほかにも、ひき逃げ、他殺、焼死など、事件性の高い死因もあった。いつ亡くなったのか、死因がなんだったのか、わからない遺体もあったという。
ただ1位の死因ががんというのは、少し意外だった。お祭りに来ていた男性(70代)に話を聞く。
「身体が悪いと思っても病院には行けないからね。お金もないし、保険証もない。痛くてもジッと我慢するしかない。どうしても我慢できなくなって病院行ったら、もうとっくに手遅れで死ぬしかないんだよね……」
と少し悔しそうに言った。彼自身も持病があり、悪化しているそうだ。
公園に張られたテントの中で、孤独にひたすら痛みに耐える老人の姿を想像して、胸が痛くなった。
現在は駅舎や公園内では野宿生活者を排除する方向にあり、ほとんど見かけなくなった。排除の実施があまりなされていない多摩川や荒川の河川敷に住んでいる人は多い。
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