ホームレス、人知れず亡くなる彼らの過酷さ 病気だけでなく災害や事件とも隣り合わせ

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僕は何年にもわたり、河川敷沿いに建てられた小屋を一軒一軒訪ねていって話を聞いている。久しぶりに訪ねると、

「小屋が荒んでいるな」

と思うことがある。人が住まなくなった家は、傷みが早くなるとよく言うが、ホームレスの小屋はより顕著に劣化する。ひょっとして……と思い近づくと、小屋の入り口に花がたむけられ、線香を燃やした跡がある。

ボランティア団体などが、亡くなっているのを発見して警察に連絡したのだ。そんな人が亡くなっていた形跡のある小屋は、本当にたくさんあった。

一般的に人が亡くなった物件は「事故物件」と言われ、忌避される傾向にある。家賃を下げる特別なサービスを実施する物件もある。ただし多摩川の小屋では、そうとも限らなかった。河川敷のかなり年季の入った小屋に住む男性(60代)に話を伺った。

「数カ月前に家を失ってここにやってきた。テレビで河川敷に住んでいるホームレスの特集を見て、多摩川に来たらなんとかなるんだろうと思ってた」

ただ河川敷に来ても、寝る場所はあまりない。雨のあたらない橋の下で、段ボールを敷いて寝るしかない。

器用に家を建てているホームレスが多いのは、もともと建築関係の仕事をしていた人が多いからだ。小屋を建てるには技術と道具が必要だし、材料も捨ててあるものだけでは無理だ。まったく建築関係では働いたことがない彼が、小屋を建てることはとてもできなかった。

「事故物件」でも、暮らせるだけでありがたい

「どうしようか? と悩んでいたら『俺が住んでる小屋の前の小屋、人がいなくなったから住んだらいいよ』って声をかけられた」

渡りに船だと思い、移り住んだという。

住んでいた人が亡くなっている物件だと聞いても、嫌な気持ちにはならなかった。

「雨風がしのげて、まともに暮らすことができるだけでありがたかったよ。人が死んだ場所だから気持ち悪い、とかぜいたく言ってる場合じゃなかったからね」と言われた。

河川敷に立ち並ぶ家(筆者撮影)

確かに、命の危機が迫っているときに「なんとなく気持ちが悪い」というような曖昧な恐怖は消し飛んでしまうのかもしれない。

河川敷は、自然災害の犠牲にも合う可能性が高い。大型の台風が来た際は、彼らが住む河川敷まで水位が上がる。

台風が近づく予報が出されると、役所の職員がやってきて「避難してください」という避難勧告がなされ、小屋に張り紙を貼っていく。ただ、それでも移動しないという人は多い。

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