「完成して住み始めたけど、数日後にはもう出入りがなくなっちゃったんだ。それで、なんか嫌な予感がしてドアを開けてみたら、その彼が小屋の中で亡くなっていたんだよ」
警察が言うには、酸欠で亡くなったのだろうということだった。小屋の中で火を使い、酸素が足りなくなったのだ。
「事故死か自殺なんだかよくわからないんだよね。小屋を丁寧に作りすぎたせいで換気ができなかったのかもしれない。もしくは、どうせ死ぬならキレイな場所で死にたいと思って丁寧に小屋を作ったのかもしれない。どちらにせよ、やりきれない話だよね。
すごい広い土地があるのにわざわざ俺の小屋の隣に建てたのは、俺に死んだのを気づいてほしかったのかな?とも思うよ」と語った。
自殺や暴行で亡くなった話も…
ホームレスが自殺をしたという話も、時々耳にした。
東京都庁舎の隣りにある、新宿中央公園で60代の男性に話を聞いていると、知人が亡くなったと言っていた。亡くなったのも男性で、同い年くらいだと言っていた。
「彼は、公園で出会った女性と付き合ってたんだけどね。振られちゃってずいぶん落ち込んでたんだけど、ある日公園の木で首を吊って死んでたんだよ」と寂しそうに語る。彼いわく、その女性も男性の死後、公園内で居場所をなくしてしまい、いつの間にかいなくなってしまったという。
1999年頃、名古屋の100メートル道路の下の公園では、「元ヤクザのホームレスが、気の弱いホームレスをいじめて自殺に追い込んだ」という何ともいたたまれない話も聞いた。
絶対数は少ないが一般人による暴力により亡くなったホームレスや、ホームレス同士で縄張り争いになったあげく殺人に発展したというケースも実際にある。
例えば2015年には、2004年に大阪の淀川の河川敷でホームレス仲間を殺して現金約100万円をうばったとして2人の男性が逮捕された。ホームレス仲間の男性の手足を粘着テープで縛り、河川敷に掘った深さ2メートルの穴に生き埋めにして殺害するという、信じられないほど残虐な事件だった。
被害者が埋められていた場所を確認すると、僕がよく取材に行っていた地点と目と鼻の位置だった。
淀川で話を聞かせてくれたホームレスの人たちは優しい人が多かった。だから、とても複雑な気持ちになった。
今回は、ホームレスの最期についてのルポルタージュを書かせていただいた。日本には誰に知られることもなく、そして誰だったのかもわからないまま、亡くなっていく人たちがいるということを、時には心にとめたいと思った。
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