「空海とソーシャルデザイン」というイベントを開いたgreenz.jp編集長の兼松佳宏さんから、こんな質問をいただきました。
「歴史上、ソーシャルなお坊さんといえば誰ですか?」
私自身、思いがけず口から出たのは「重源さん」でした。
“ソーシャル”と一言で言っても、ここで聞かれているのはソーシャルネットワークなど社交の意味ではなく、社会課題を解決するソーシャルデザインのソーシャルです。
なぜ重源さんなのか。
重源といえば、なんといっても有名なのは「東大寺の大仏再建プロジェクト」。実は、重源はこのプロジェクトをクラウドファンディングで成し遂げました。オンラインではありませんが、全国を股にかけて貴賤を問わず老若男女からおカネを集め、国家的なプロジェクトを成功へと導いたのです。
その頃の日本は平安時代から鎌倉時代への移行期で、貴族から武士へ、国の仕組みが大きく変わる時期でした。現代で言うところの巨大企業のような存在として、領土と権益を拡大する貴族や寺社が勢力を伸ばす一方、国に入る税金は減り、国家が財政破綻へと向かいます。そして、富裕層と貧民層の格差は増大し、緊張が増してきます。なんだか今の社会と似通っていますね。
国家プロジェクトの総プロデューサー、「大勧進職」に就任した当時、重源は61歳。「勧進」とは、今でいうならば資金調達、ファンディングです。国家プロジェクトながら、国家におカネがなかったので、カネも集めて来いというわけです。プロジェクトの目的が「大仏再建」という、当時では公共性の高いものであり、重源はさまざまなスキームを駆使し、金持ちから民衆まで、幅広くおカネを集めました。平安時代のクラウドファンディングといってもよいでしょう。源頼朝、西行、奥州藤原氏……政財界の大物から著名な文化人まで、人脈を駆使しておカネを集めました。
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