僕が「あまちゃん」紅白で奇跡を起こすまで 40歳過ぎての微妙なポジション。そのとき僕は…

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ある屋上のロケで、僕はベンチを発注しました。現場にあったのは、動物のカタチのベンチでした。美術班のアイデアです。そのおかげで、ずっとよくなりました。自然とみんなが参加するようになりました。まさにチームです。それまでは、力を示すことでリーダーという役割をこなしてきました。でも本物のリーダーは、謙虚と献身を兼ね備えています。こんな経験から僕は思います。

人は変えられない。そのとおりです。だけど……
 自分を変えれば、自分に接する人の心は変わります。

日常生活にも変化が現れました。それまでデートでも相手が遅れると、どうしても自分を抑えられず、嫌味や愚痴を言っていました。今では、「俺イライラしてるな」と、認識できるようになりました。すると不思議と、嫌味が出なくなりました。すると相手が遅れなくなりました。さらに、やせました! 自己コントロールの賜物です。

具体的には、今まで盛られたご飯に合わせておかずを調整して、全部たいらげてましたが、今はおかずに合わせてご飯を食べます。すると、時々、ご飯が残るようになるなど、やっているうちに、これまでいくらダイエットしても失敗していたのが、いつのまにか10キロほどやせたのです。

周囲の言葉に、変化を実感しました。「サラリーマンNEO」と「あまちゃん」、両方経験のあるカメラマンが言いました。「またNEOのときみたいに怒鳴られるかとびびってたけど、最後までおだやかでびっくりした。人って変わるんですね」と。妹も言いました。「前は笑うとき、嫌味な口元だったけど、今は心から笑ってる気がする。人って変わるんだね」と。僕には、怒鳴っていた記憶も、嫌味な笑いをしていた覚えもありません。自分はあまりに自分を知らない。だけど人は変わります。変われば強くなります。

強さって2つあると思います。

ひとつは上に伸びること。
 もうひとつは、しなやかであること。

「サラリーマンNEO」の初期は、ともかく自分を高めるために、無我夢中でした。だけど行き詰まりました。茎が固かったから。中期からは、人の意見を取り入れ、徐々に幹を太くし、映画からは、人を受け止める柔らかさを身に付けていたのだと思います。

詩人T.S.エリオットは言います。

人は探求をやめない
 そして探求の果てに最初の場所に戻り
 初めてその地を理解する

エリオットは「人は探求をやめない」と言っています。しかしこれだけ情報がシャワーのように押し寄せる時代、処理するだけで精いっぱい。探求する心は、削がれやすいと思います。そこで、自分を探求し続けましょう。いろいろ変化を与えて、自分を飽きさせないようにするのです。さまざまな自分を試した果てに、ようやく本当の「自分」に触れる幸せに出会えるのでしょう。人生を終えるとき、「その地」、すなわち自分を理解できないなんて寂しすぎます。

自分とは、最大の謎です。決めつけず、楽しみましょう!

それが僕の仕事の秘訣です。

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