僕が「あまちゃん」紅白で奇跡を起こすまで 40歳過ぎての微妙なポジション。そのとき僕は…
ウッチャンの番組はやりがいがあるだろう。でもRPGの主人公「てるくん」(僕)にとっての冒険は、朝ドラじゃないのか。ドラマはやったことがないんだし、芸能番組のディレクターが朝ドラやるなんて、NHK史上初めてだよ。
結局、僕は「あまちゃんクエスト」を始めることにしました。つらい道だとはわかっていました。これまで何年も、NEOで番組すべてを仕切ってきたのに、40歳を超えたこの年に、セカンドディレクターという微妙な立場です。それで満足できるのか? 最終決定権がないことに不満が募らないのか。当然……募ります。そんな自分の嫌な感情を認めました。自分から離れるとは、自己をコントロールすることにほかなりません。ただここで言っておきたいことがあります。自分から離れるとか自己コントロールというと、なんか「いい人間」になることと、理解する人がいます。いえ、全然、違います。
自己コントロールとは、負の感情も認めることです。
どうせつらい道です。利用して自分を更新しようと、僕は“強制執行”しました。
Chapter 6 自分が変われば周りも変わる
新しいことを始めるときに、目標を定めたり理想をイメージしたりしますよね。僕はしません。だって絶対にそうなりませんから。その代わり、自分にテーマを課します。
セカンドという立場ならばと決めたテーマは、「謙虚」と「献身」。両方とも美しい言葉です。そして僕にはまったくない部分でした。ただ僕もいい年です。そろそろ身に付けなければと、重い腰を上げました。スタッフや出演者の顔合わせから、つらさが身にしみました。誰も僕の顔を見ていない。会議もつらかった。これまではつねに話題の中心で、時間や方向性もすべて仕切っていたのですから。それでもやるしかない。最初に取り組んだのは、
人の話を聞くこと、です。
最初は本当にきつかった。時間もすごく長く感じました。だけど耐えました。そして第2段階として取り組んだのは、
人が発言しているときは、自分の考えを浮かばせない、でした。
その意識を現場でも広げました。どんな場面でも人にでも、よく聞くように心掛けました。それを成し遂げるために、禅にも取り組みました。心を落ち着かせる、たわいもないことは受け流す、物事をありのまま見つめることに、注意を向けました。するといつしか、みんなが、アイデアを遠慮なく言うようになりました。
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