斜陽の「呉服」を売上12倍にした商売のカラクリ 「着物離れの理由」を徹底分析した振袖の一蔵
日夜テクノロジーが進化する中で、ビジネスの手法、言い換えれば「儲けの仕組み」も、どんどん変わってきている。あるサービスや企業に対して、「格安なのに、なぜやっていける?」「利用料ゼロで、どう稼いでいる?」など、疑問を抱いたことのある人もいるだろう。こうした「儲けの仕組み」について解説する当連載。第5回のテーマは、超縮小市場にある呉服業界で主力事業の売り上げ12倍にまで拡大した「振袖の一蔵」だ。
「斜陽産業」とは、需要が減少傾向にあり、市場が縮小しつつある産業のこと。成熟期を通り越した産業である。こうした業種・業界の中にある企業は、縮小していく市場の中でどう生き残るか知恵を絞る。
市場規模は全盛期の「7分の1」
呉服業界も、過去数十年間にわたって市場は縮小傾向にある。今から50年以上前、昭和30年代初めの頃の映像や写真には、着物に割烹着姿で買い物をする婦人たちが写っていたりするが、今では着物姿を見るのは七五三と成人式、結婚披露宴の振袖、花火大会の浴衣くらいだろうか。普段着として和服を着る文化はもはやなくなってしまったと言っていい。
その結果、着物メーカーは高級な着物しか作らなくなった。メーカーは、作っても着る人がいないから普段着の着物は作らず、高級着物を少量生産するだけ。日常生活からも着物文化はなくなる一方なのだから、市場規模が縮小するのは当たり前。今では全盛期のほぼ7分の1だという。
だが、そんな超縮小市場にあっても、業界に一石を投じた企業がある。東証1部上場の一蔵(いちくら)だ。2019年3月期の売り上げ高は168億3900万円。前年比で約3%の増加にすぎないが、それでも8期連続で売り上げ高を伸ばし続けている。
一蔵を取り巻く環境は、市場規模が「全盛期のほぼ7分の1」という厳しい状況だけではない。着物のメインターゲットとなる女性の新成人が、「創業時(1991年)から約3割減少」という逆風もある。そんな逆境下にあっても、着物の販売・レンタルといった主力の和装事業の売り上げ高を「12倍」にまで拡大してきているのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら