着物警察が若い女性を目の敵にする歴史事情 商品の「高級化路線」を狙った着物業界の功罪
「着物警察」という言葉をご存じだろうか? 若い女性が着物を着て外出したとき、街で見ず知らずの年配の女性にいきなり呼び止められ、「帯締めの位置が低いでしょ」と指摘されたり、「帯と着物の色が合ってない」と言われたり、さらには、「それポリエステルでしょ?」とバカにされたり、ひどい場合は「勝手に帯を直されたり」もするという。
冗談かと思うかもしれないが、ネットやツイッターで「着物警察」と検索してみてほしい。被害にあった女性たちの声などが多く見られる。さながら交通違反のキップを切る警察官みたいだから、着物警察と呼ばれ、着物で外出する若い女性に怖がられている。なかなかうまい造語だと思う。
私は女性ではないし、若者でもない。もう何年も着物を着ていないが、こんなふうに言われたら嫌だろうな、着ていくのをやめようと思うだろうな、というのはわかる。そりゃ、戦後一貫して着物離れが進んでいるもの、着方を知らないのは当然だ。こうやって、より着物離れが進んでいくんだろうな……と。
「着物警察」が生まれたのはいつか?
だが、そうだろうか? 「着物警察」という言葉が生まれるためには、次の2点が必要だ。
まず絶対条件としてはこれだ。そもそも若者が誰も着物を着なければ、チェックされるはずもない。最近増えたから、着物警察の餌食になったのだ。
例えば夏の花火大会での女性の浴衣姿は、ここ数年でずいぶん増えた。男性もチラホラいる。あれはコスプレ文化の一面でもあると思うが、以前はあんなにいなかった。そして「成人式の振袖」も、以前はあんなにもみんな着なかった。
正確な統計はないものの、和服小売り店の感覚としては、ここ数年は「過去に例を見ないほど振袖率が高い」という証言もある。これはコスプレではなく、おそらく制服感覚だ。むしろ洋装のほうが「和を乱す(和服だけに!)」「目立つ」「空気が読めない」ことになってしまうので、若者はそれを怖れる(就活のときの、あの個性を殺したリクルートスーツと同じだ)。だからみんな振袖を着る。すると、そこにつけ込んだ「はれのひ事件」が起きてしまうのだが……。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら