着物警察が若い女性を目の敵にする歴史事情

商品の「高級化路線」を狙った着物業界の功罪

・昭和43~46年(1968~1971年)

団塊の世代が続々と成人になる。戦後生まれの世代が、実は「戦後生まれの新しい伝統」である成人式を迎えるのだ。新成人の数は、このあたりがピーク。

昭和43年(1968年) 236万人(うち女性117万人)
昭和44年(1969年) 243万人(うち女性121万人)
昭和45年(1970年) 246万人(うち女性123万人)
昭和46年(1971年) 216万人(うち女性106万人)

……当時の写真を見ると、女性の約半数が振袖だという。毎年、50万~60万人が振袖を着たのだ。着物業界は空前の好景気を迎えた。

・昭和45年(1970年)

振袖だけでなく、子供の入学式や卒業式でも、母親が羽織を着た。当時「PTAルック」と呼ばれる。黒絵羽織の生産ピークはこの年で、120万点も売れた。うち110万点が新潟県十日町産。おかげで十日町は日本有数の着物産地となる。

同年、塩月弥栄子の『冠婚葬祭入門』が出版される。これは私が子供の頃だからよく覚えている。カッパ・ブックスだ。団塊の世代がどんどん大人になり、家庭を構え、世間とのつきあいを始めると、戸惑うこともある。だが、核家族化が進んでいるので、教えてもらう人がそばにいない。なにしろ「家つき、カーつき、ババ抜き」の時代なのだ。そこで、茶道の裏千家宗家の娘である塩月弥栄子を持ってきた。よく考えると、彼女は別に行儀作法の専門家ではない。しかし、なんといっても裏千家だ。説得力はある。

すると大ベストセラーとなった。この本が約308万部。続編や続々編などを合わせるとトータル700万部といわれる。サブタイトルに「いざというとき恥をかかないために」とある。人々が内心弱いと思っているところへ、スッと答えを差し出してあげたわけだ。

・昭和47年(1972年)

余勢いを駆って、塩月弥栄子『きものの本』が出る。こっちのサブタイトルは「どう買う、どう選ぶ、どう着こなす」。なにしろ、着物市場は空前のブーム。需要はあるはずだ、という出版社の目論見だろう。この本がどれくらい売れたかはわからない。が、大ベストセラー作家・塩月弥栄子のマナー本だ。注目はされただろう。

・昭和50~56年(1975~1981年)

1970年代にずっと伸びてきた着物市場の売り上げは、このあたりで1兆8000億円となる。結果的にここがピークで、以降はずっと下降を続けていく。現在は約2800億円。ピーク時の6分の1になってしまった。

さて、縮小する市場の中でさきほどの着物に関する時系列の中で、あえて1つ書き落としていたことがある。

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