今までの医療では、患者は治療を受ける側、医師や医療者は治療を与える側という、2つの分離する役割意識があった。
患者は無力であり、病気に対して何もできない。患者は医師の指示に従っていればよい――。こんな意識が、医療者の側だけでなく、患者や家族の側にもあったのではないだろうか。しかし、これからの医療には、患者が医療やケアに参加し、その役割を果たしていくことが求められる。
医療・ケアに積極的に参加する理由
その主な理由は、慢性病が増加し主要な疾患となったためだ。がん、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病や難病の増加、高齢者が複数の病気を抱えることが増えているためだ。
がんも、治療後5年以上生存することが多くなった。治療後の身体状況で生きていくため、あるいは、がんの再発予防のための療養生活をしなくてはならないために、慢性病の1つと考えることができる。
がんや難病は、突然訪れることが多い。それまで健康であることを前提に生活をしてきた人にとって、日常生活の大きな変更を余儀なくされ、変化に対応するための決断が次々に迫られことになる。
だからこそ、現在元気だという人にとっても、病気や健康について、医療の仕組みなどの知識をある程度の準備をしておいたほうがいいだろう。
慢性病は、結核や肺炎などの感染症と違って、多くの場合薬で治癒することはできない。薬で治癒しないからこそ慢性病なのだ。例えば、C型慢性肝炎・肝硬変もかつては典型的な慢性病であったが、副作用が少ない経口薬で治癒してしまう時代が訪れ、治癒した人にとっては慢性病ではなくなった。
治癒することができない慢性病を抱えながら療養生活を送るためには、患者としての主体性と知恵が必要となってくる。そのためには、患者同士の情報の交換が有益となるだろう。医療者は病気を抱えて生活をする知恵を持ち合わせておらず、当事者である患者が持っているからだ。
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