2、病気に負けないように(日常生活に対する支援、情緒的サポート)
慢性病の患者は、病気の症状や障害を抱えながら生活することになる。身体面で大変なだけでなく、勤務することが困難になったり、医療費の出費が増えたりするなど、経済的な困難にも直面する。また、職場や社会から差別や嫌がらせ、ハラスメントを受けることもある。
患者自身、病気になったことを受容することは難しい。病気の受容とは、必ずしも病気が治癒することを完全に諦めることではない。現在持っている症状や状態を前提に、今を生きることが受容である。
しかし、多くの場合、病気と診断されるのは突然の出来事であり、そんな中で病気を受容することは容易ではない。突然失った身体的機能を受容することも難しいし、病気を抱えたことによる環境変化も受容しがたい。悲しみや怒りがこみ上げている。ドクターショッピングを重さねたり、うつ状態になることもある。
患者同士の支え合い
そんなときに役立つのが、同じ症状や病気をもった人からの支えである。同病の人であれば、悲しみや怒りの気持ちに共鳴して聞いてくれるし、うつ状態になっていることにも理解を示してくれる。このように親身になって聞いてくれる人をもつことによって、患者の感情の乱れは癒やされていく。
そして、何よりも大切なことは、エキスパート患者が、病気を抱えた状態を受容し日常生活を送っているよい手本となってくれることだ。病気を抱えて生活することなど考えてもいなかった患者にとって、彼らはよい先輩となってくれる。前述のクルーガー氏も、このような役割を病院の中ではたしている。
同病者によるこのような支援をピアサポートと呼ぶ。ピアとは仲間という意味だ。今後、ピアサポートが患者会の役割の大きな部分になっていくことになるだろう。
病気になったとき、あるいは病気を抱えて悩むときには、このようなピアサポートを求めて患者会にアプローチするときっと役立つだろう。ネット上で検索するとさまざまな患者会がでてくるが、その中から自分の思考法や嗜好に合ったものを見つけることが大切だ。
3、本当の福祉社会を創るために(社会に働きかける)
患者会は社会に働きかけて、福祉社会を創ることにも貢献してきた。例えば、2006年6月に議員立法で成立したがん対策基本法は、患者会からの運動の盛り上がりがもたらした成果である。
それまでは、患者の声は蚊帳の外に置かれて行政が進められてきたが、この法律の成立は、患者の声を医療政策に活かすきっかけとなった。がん対策協議会の中に、患者・家族を委員とすることも明記されることになった。
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