出口治明「死ぬときは自分の家で思い通りに」 人生「悔いなし、貯金なし」で終われば最高

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世界史・日本史に精通する出口氏に、歴史上の人物の死に方で、印象に残った人はいるか尋ねてみた。

「紀元1世紀のローマ帝国で、悪名高いネロの後に皇帝になったウェスパシアヌスという人がいます。若いときに読んだ世界史の本で知ったのですが、この人は年を取ってから皇帝になった、なかなかのユーモアの持ち主です。

ローマ皇帝は、カエサル、アウグストゥス以来、死んだら神様になるのですが、冷徹で知性的な皇帝だったウェスパシアヌスは死に瀕して、『控えおれ。俺は今から神になるぞ』」と言ったそうです。それで死んでしまった。

僕は、人間にとっていちばん大事な能力は、どんなときにも自分を笑うことができるユーモアを忘れないことだと思っています。最後に周囲をからかって死んだウェスパシアヌス、格好いいおじさんやなあと思いました。

日本で言えばやっぱり織田信長ですね。明智光秀謀反の報を聞いたとき、信長は一言、『是非もなし』と言ったと伝わります。その意味するところは諸説ありますけれど、あんなにかわいがっていたのに!と激怒したりするわけでもなく、恨みつらみや未練を言うわけでもなく、リアルに現実を受け止める一言だけを発した。最後まで合理的でクールだったところが信長らしいなあと、ひかれます。

ロマン・ロランが言った有名な言葉がありますね。『人間にとって必要な勇気はたった1つ。現実をありのままに見つめ、それを受け入れる勇気である』」

いろんな年齢の友人がいると、楽しくなる

それにしても、周囲の友人知人が亡くなるなどして、死の恐れを身近に感じることもないのだろうか。

「年を取ると死の恐怖があるのは、わからないでもありません。友達や知人がたくさん死んでいくから死を意識してしまう。でも、死亡表(年齢別死亡率や平均余命などの統計)を見れば年を取ったら死亡率が上がっていくのははっきりしている。確率が年々高まっていくわけですから、別に怖れることはないと思います。当たり前のことやな、と思えばいいだけの話です。

周囲の人が亡くなっていき、孤独に感じる人がいるかもしれません。それは、仕事が終わったら『飯、風呂、寝る』だけの生活で、職場の中にしか友達がいなかったら、定年退職すると友達が減って、同期の人もだんだん亡くなっていくので、遊ぶ友人がいないなとか思って寂しくなるのです。

そういうときは、亡くなった友人の代わりに新しい友人を作ろうと思えばそれでいい。若い友人をつくれば、そんなに孤独は感じないでしょう。同世代の友人しかいないから、寂しく感じるのです。

いろんな年齢の友人がいると、楽しくなる一方です。僕は昨夜も12時頃まで飲んでいました。一晩空いたので、フェイスブックで「○日の晩、飲みませんか」と誘っただけですが、結果的に集まったのは、学生、ジャーナリスト、大学の先生、ピアニスト、日本舞踊家、起業家、作曲家、会社の社長、編集者といった面々でした。

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