出口治明「死ぬときは自分の家で思い通りに」

人生「悔いなし、貯金なし」で終われば最高

人間や生物の基本原理は、ダーウィンの進化論にすべてが要約されていると考えています。『運』と『適応』です。運というのは適当なときに適当な場所にいることですが、そんなのは自分では絶対わからない。人智を超えた世界です。川の流れにどう適応するかだけが肝要です。

だから仕事を辞めた後に何をしようかなどと計画したことは一度もありません。川の流れのままに生きていますから。ただ、僕は旅が大好きですから、旅に出るかもしれません。

生まれは三重県の美杉村ですが、育ったのは伊賀上野。ここは芭蕉が生まれたところです。芭蕉の『旅に病んで夢は枯野をかけ廻る』という辞世の句がありますね。仕事を辞めたあと、世界を放浪するのは何だか楽しそうですね。

だから、面白そうな町を歩いているときに心臓麻痺で死んじゃうというのが楽しいかな、とたまに空想することはあります。今まで自分の脚で歩いた町は1200~1300ですが、まだまだ行きたいところは山ほどあります。とくに南米はインカの遺跡ぐらいしか歩いていないので、パタゴニアとかアマゾンとかに行ってみたい。

棺の中に1冊愛読書を入れてもらうとしたら、今思いつくのはマルグリット・ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』です。20代後半に読んでから、これを超える本にはまだ出会っていないと思います」

財産がなければ家族がもめる心配もない

仕事も旅も、やりたいことをやり切って最期を迎えるのが望みだという。お金も遣い切る主義だ。

「あれもやっておけばよかった、これもやっておけばよかった、と悔いを残す人生が一番つまらない。人生は1回きりなので、やりたいことはみんなやる。好きなことをやるのがいちばん楽しい人生だと思っているのです。だから、人生『悔いなし、貯金なし』で終われば最高です。

歴史を見ていると、お金を遺すとろくなことがないんですよ。遺産をめぐって争ったケースが山ほどあるじゃないですか。例えばムガル朝はすごいですよね。タージマハルを建てたシャー・ジャハーンの子供のアウラングゼーブは、兄弟を殺し、お父さんを幽閉して王国を継承したわけです。

でも財産がなければ家族が遺産相続で争うこともない。僕の場合は貯金なしですから、遺産が配偶者控除を超えることなど未来永劫ありえないので、家族がもめる心配もありません。

というのも、僕は貯めるより使うほうが大好きで、働いて得たお金はご飯を食べるとか、お酒を飲むとか、旅をするとかに、どんどん使っています」

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