「イクメン」という言葉を聞いてモヤモヤするのはなぜだろう?
私は子どもを授かる前から、そして育児に没頭する今も、この言葉に疑問を持っている。
「イクメン」だと呼ばれると少しだけうれしい。ただ、「イクメン」という言葉があること自体、男性が育児に参加することがそもそも「普通ではない」「普通ではなかった」ことを物語っている。「イクメン」になったからと言って、仕事の量を減らしてもらえるとは限らない。出産・育児を経てから、以前ほどバリバリと働くことができなくなった女性と同じような悩みを抱える。
共働きで子どもを産んで育てながら働いている女性からすれば、当たり前の話かもしれないが、私の目線から見えたことを論じていきたい。
拙著『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』にも詳しく書いたが、私は5年間の妊活を経て2年前に43歳で父となった。今では1日6時間、育児・家事に没頭している。妻からは感謝されるし、私の作った料理で娘が喜んでくれるとうれしい。ただ、「普通の“男子”に戻りたい」と思う瞬間は正直ある。もっと自由に思う存分働きたい、と。
育休の誤解 会社は休めても育児は休めない
男性の育児休暇取得の義務化が検討されている。まだ法案化されたわけでも、それが成立したわけでもない。「義務」がどれほどの拘束力を持つのかもわからない。
育児休暇を取りやすくする社会と会社にするための変化がもたらされるなら賛成だが、これまで男性が育児休暇を取得しない根本的な原因に踏み込まないままでの義務化、あるいはうまくいかなかったから義務化するという安易な論理だとしたら反対だ。
現在の育児休暇取得状況を確認してみよう。厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、男性の育児休業の取得率は6.16%で、前年度より1.02ポイント上昇した。上昇は6年連続だ。とはいえ、まだ10%にも達していない。それに対して女性の育児休業取得率は1.0ポイント低下の82.2%だった。ここ数年、80%台前半で推移している。
「イクメン」が新語・流行語大賞を受賞したのは2010年だ。「育児に積極的に参加する父親」のことと定義されている。ただ、育休がすべてではないが、現実はこうだ。
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