バリキャリをやめた43歳女性が幸せそうなワケ "自分中心生活"をやり切った後の結婚は…

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金融機関での契約社員の仕事に関しては「やりがいも責任もない。給料も安い。つまらない」と敦子さんは断言する。しかし、不満はない。

「子どもがいなかったら畑違いの金融には勤めていません。でも、この仕事は休みを取りやすく定時で退社できるのが何よりのメリットです。子どもが急な病気になったら休めるし、夕方は保育園にお迎えにも行けます。育児が楽しいと自分が思えるとは予想していませんでした。娘は毎日、ちょっとずつできることが増えます。成長を見るのが楽しいです」

敦子さんは20代と30代は時間もお金も愛情もすべて自分のために使った。だからこそ、40代は家族のためにそれを向けられると感じている。

「自分なりにいろいろやり尽くしました。今、とくに欲はありません(笑)」

筆者には子どもがいないが、同じ40代として敦子さんの感覚は少しわかる。20代30代は自分のことで必死だったし、これからも頑張らなくては生計を立てていけないだろう。でも、「自分以外の誰かに力を尽くすことで、結果として自分も生かされる」という流れにも入りたい。一生懸命な若者には力になってあげたい。そう感じるのはやはり年齢のせいだと思う。

「夫のような人がよく残ってくれていました」

敦子さんの話に戻る。時間もお金も愛情も家族のために向けられると感じている今、哲夫さんはベストパートナーとして光彩を放っている。

「夫も娘をかわいがっていますが、接し方は比較的フラットだと思います。彼はとにかく私が第一。仕事から帰ってくると、私と一緒に寝たがってゴネる娘を『お母さんは疲れているから休ませてあげないといけない。僕と一緒に寝ようね』と説得してくれます。休みの日は家事をまめにやって、『美容院に行かなくていいの?』とか『たまには飲みに行っていいよ』と声をかけてくれるんです」

哲夫さんはクールで世慣れた敦子さんに恋をし続けているのだと思う。友達からの評判も歴代の恋人で最高値らしい。

「とにかく優しくていい人だからでしょう。『あんな人が30代後半までよく未婚で残っていたね』と言われます。妹に言わせると『お父さんに雰囲気が似ている』そうです」

敦子さんの父親は、亡き妻と2人の娘を大事にし続けた男性だ。オシャレでもあり、敦子さんが高校生になっても一緒に買い物を楽しんでいた。

「中学生の頃、友達から(父親のことを)『あんな素敵な男の人はほかにいない』と言われたことが印象的で、自分は結婚できないと思い込んでいたところもあります。本当に、夫のような人がよく残ってくれていました」

今は育児が中心の生活であるが、娘とベッタリ一体化したような母親にはなりたくない。娘は別人格だと敦子さんは割り切っている。

「こんな大人になってほしいという願望もありません。でも、娘も大きくなったらいろいろ恋愛をするでしょう。最後に『これ!』という男の人を見つけてほしいですね」

若い頃は自分のための人生を謳歌する。最終的に優しいパートナーを見つけ、家族をはじめとする他者のために愛情を注ぐ。人間らしい生き方といえるだろう。それは敦子さん自身の人生にも重なっている。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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