続いて、優秀賞の2作品を紹介しよう。
こちらも「御行(おんこう)」と「温厚(おんこう)」を掛けた見事な句である。大手人気企業といえども、内定を出すまでは企業側が優位ではあっても、内定を出した後は学生優位に立場が逆転する。
企業からの内定取り消しはよほどの理由がない限り認められないが、学生からの内定辞退は自由だからだ。内定承諾書や誓約書を提出していたとしても効力などない。企業は過去の実績を考慮し、ある程度の内定辞退を見越して、採用計画人数に対してやや多めの内定を出すことが多い。
ただし、採用人数の多い大手企業では、入社後の活躍期待値の高さや内定辞退の可能性によって、内定者をグループ分けしていることがある。どのグループに振り分けられているかによっても、内定辞退を申し出たときの対応は異なる。
都市伝説は今もある?
もちろん、内定辞退の伝え方や辞退理由、辞退を申し出た時期によっても変わってくる。入社後の活躍期待値が高いグループや、内定辞退されることはないだろうと思われるグループの学生からの内定辞退には、人事担当としてはショックが倍増である。ハラスメントに近い言動に出ることもありうるだろう。もちろん許されることではないが。
今回の作品は、金融系企業に内定辞退を伝えた際の企業側の対応を詠んだものだが、かつて、金融系企業の内定辞退対応に関して都市伝説になっている逸話がある。内定辞退を伝えに人事部を訪問した学生は、頭からコーヒー(かつ丼という説もある)をかけられ、クリーニング代だと2000円渡されたという。まだインターネットが普及する前、伝言ゲームのように広まった逸話であり、事実かどうかは不明のままだ。
優秀賞をもうひとつ。
今の就活生の親世代は、1980年代半ばから90年代前半あたりに自身の就職活動を経験した世代が多い。バブル期だった人もいれば、バブル崩壊後に就職活動を経験した人もいる。ただし、どちらであろうといまの就職活動とまったく異なる点がいくつもある。
一番大きいのはインターネットである。当時、就職ナビなどまだなかった。就職ナビが初めて登場したのは1995年であるが、当時は通信環境がよくなかったから、普及するにはそれからさらに何年もかかっている。インターネットがないということは、企業のホームページもないということである。
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