企業情報は、電話帳のように分厚い就職情報誌か、はがきで請求して企業から送られてくるパンフレットで調べるしかない。上場企業であれば、『会社四季報』の情報もあったが、ほとんどの学生は見方がわからなかった。
メールもなければ、携帯電話も普及していない時代であるから、企業からの連絡はもっぱら郵便か、自宅の固定電話あてということになる。当時の人事担当者は大変だった。いくら電話しても学生本人になかなかつながらない。実家暮らしであれば親へ伝言もできるが、1人暮らしの場合には何度もかけ続けるしかない。今や対象学生への連絡は、ワンクリックでメールの一斉配信が可能である。
それに当時は、エントリーシートやインターンシップもほとんどなかった。就職活動自体がまるで違っていたわけだ。そして、今や当たり前となった企業、例えばヤフーも楽天もまだ誕生していない。こうして考えてみると、就職活動だけでなく、日常生活自体がとてつもなく変化した時代だったと言える。親のアドバイスがずれていたとしても許してあげて。まさに「時代が違う」んだから。
サラリーマンが偉く見える
ここからは、佳作に入選した作品をいくつか紹介していきたい。
普段、街中や電車の中で、何気なく目にしているサラリーマンやOLの人たち。実は、彼ら、彼女らも全員が就職活動の関門を乗り越えて、今があるんだということに気づいたとき、尊敬の念を抱くとともに、みんなが偉人に見えたという句。
酔っぱらってネクタイを鉢巻のように頭に巻いている新橋のオジサンたちでさえ、もう笑うことはできない。早く、偉人の仲間入りができることを祈っている。
ある食品メーカーの面接で、その会社の好きな商品を聞かれた際に、間違って競合他社の商品名を答えてしまった瞬間の一句。
エントリーシートの志望動機欄などを使いまわすときにも起こりやすいミスであるが、面接ともなるとその瞬間は凍り付いたに違いない。ましてや最終面接で役員相手にしでかした日には、笑ってごまかすことも不可能だ。よくあるネタだけに、これから面接を受ける人は十分慎重に。
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