ラグビーで多発?スポーツ界の「和製英語」問題 「ノーサイド」は、アウトかセーフか

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ラグビーの試合終了には「ノー・サイド」という表現が使われます。「ノー・サイド」と聞くと、ユーミンの歌を思い出すのは筆者の世代のせいでしょうか。歌になっているくらいですから、皆さんもこの表現は聞いたことがあると思います。でも、英語ではラグビーの試合終了はFull timeと言います。

× No side → ○ Full time(ノー・サイド)

No sideの由来は「試合が終了したら、どちらのチーム(サイド)という区別なく、同じ仲間である」という精神に基づいていると聞いたことがあります。しかも、ほぼ日本でしか使用されていないようで、「ノー・サイドは和製英語だ!」と言われることもあります。でも、ちょっと調べてみたら、実はこれ英語表現としても正しいようですよ。

目先にとらわれず、使い分けができるとスマート

アメリカの有名なスポーツ専門チャンネルでESPNというのがあるのですが、イギリスにもESPNが存在します。アメリカではラグビーはそれほど人気がありませんが、イギリスではラグビーが盛んですので、イギリスのESPNのウェブサイトを見てみました。すると、この「ノー・サイド」の説明が載っていました。一緒に見てみましょう。

No side
Antiquated term used to describe the end of the match. Superseded by full time.

ノー・サイド
試合の終了を意味する古い言い方。フルタイムと言い換えられている。

つまり、現在は使われていないようですが、もともとは英語だったということですよね。「和製英語だ!」と騒いだり、「間違っている!」と指摘をしたりするのは、ちょっとオーバーリアクションでしょう。

ここまでラグビーにおける「和製英語」を取り上げてきました。やはり「よくないもの」と感じてしまう方も多いのではないかと思いますが、これは私たち日本人が、英語が苦手なことにコンプレックスを感じる傾向があるという背景もあるかもしれませんね。

英会話教師らしからぬ発言かもしれませんが、日本国内では、(英語ではなく、あくまでも日本語であるとわかったうえで)堂々と和製英語を使い、国際舞台に出たときには、さっとスイッチを切り替えて、スマートに英語の表現を使うことができるのがいちばんカッコいいですね。ラグビーをきっかけに、ちょっと和製英語のあり方について考えさせられました。

箱田 勝良 英会話イーオン 教務部 チーフトレーナー

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はこだ かつよし / Katsuyoshi Hakoda

1972年静岡県熱海市生まれ。1995年筑波大学国際関係学類卒業、株式会社イーオン入社。

講師として、これまでに約1万人を教える。スクールの講師を経た後、法人部教務コーディネーターとして、多くの企業の研修カリキュラム企画と講師を担当。楽天の社員の英語力研修も担当した。TOEIC(R)テスト990点満点、実用英語検定1級。

学生時代には1年間の留学以外には海外経験なしで、日本に住み暮らしながら英語力を飛躍的にアップさせた。その自身の経験を基に、現在は教務部のチーフトレーナーとして、イーオン全体の講師の研修やカリキュラム立案に関わる。

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